第217回相続コラム 罰則のある相続登記の義務化-登記申請しないことに「正当な理由」があると認められる場合とは

相続コラム

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第217回相続コラム 罰則のある相続登記の義務化-登記申請しないことに「正当な理由」があると認められる場合とは

第217回相続コラム 罰則のある相続登記の義務化-登記申請しないことに「正当な理由」があると認められる場合とは

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。相続登記が義務化されると、「正当な理由」がなく、定められた期間内に相続登記を申請しないと罰則の適用があります。今回のコラムでは、罰則の適用の可否を決める、登記申請しないことに「正当な理由」があると認められる場合とはどのような場合なのか解説したいと思います。

 

相続登記の義務化おさらい

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。相続登記が義務化されると、法律で定められた一定期間内に、相続登記の申請をしなければなりません。

具体的には、以下のようになります。

相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(改正後の不動産登記法第76 条の2第1項)。

遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(改正後の不動産登記法第 76 条の2第1項前段、第2項、第 76条の3第4項)。

上記の申請を、「正当な理由」がないのに怠った場合には、10 万円以下の過料という罰則があります(改正後の不動産登記法第164条)。

なお、新しく創設される『相続人申告登記』を利用した場合には、相続登記の申請がなされたものとみなされ、罰則の適用を免れることができます(改正後の不動産登記法第76 条の3第1項、第2項)。

相続登記の義務化について詳しくは
第124回相続コラム 相続登記義務化に関する法改正(令和3年4月21日)」をご覧ください。

相続人申告登記について詳しくは
第125回相続コラム 相続登記の義務化と新設された制度(相続人申告登記)」をご覧ください。

 

「正当な理由」の例示

「正当な理由」がなく、相続登記の申請を怠った場合には、罰則の適用がありますが、「正当な理由」とは、一体どのようなものを指すのでしょうか。先月、法務省から『相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン』が発表され、その中で、「正当な理由」が例示列挙されていましたので、ご紹介したいと思います。

1.数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

2.遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合

3.相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

4.相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

5.相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

上記は、あくまで例示ですので、上記以外のケースが「正当な理由」と認められないわけではなく、ケース毎に個別具体的に判断されることになります。

法務省『相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン』
https://www.moj.go.jp/content/001393077.pdf

 

おわりに

今回のコラムでは、相続登記の義務化についておさらいしつつ、罰則の適用の可否を決める、登記申請しないことに「正当な理由」があると認められる場合とはどのような場合なのか解説しましたが、いかがだったでしょうか。

実際に法律が施行されてみないことには、正確な判断は難しいですが、どのような場合に罰則が適用されるのか、ある程度の指針が示された格好となっています。いざ法律が施行された際に、慌てないように、早めの準備をおすすめします。

また、ご自身が放置することによって、お子さんやお孫さんなど、次世代に面倒事を残さないためにも不動産の権利関係をすっきりさせることは重要になってきます。

当事務所では、相続や遺言についてのご相談を広く受けております。対応にあたる司法書士は、不動産登記のエキスパートです。初回相談は無料となっておりますので、相続登記で気になることがあれば、お気軽にご相談下さい。