第153回相続コラム 事例から学ぶ実家の相続登記を放置した際のリスク

相続コラム

相続コラム

相続コラム

相続コラム

第153回相続コラム 事例から学ぶ実家の相続登記を放置した際のリスク

第153回相続コラム 事例から学ぶ実家の相続登記を放置した際のリスク

相続した不動産の名義変更手続きである相続登記。これをせずに長年放置すると、どのようなことが起こるのでしょうか。今回のコラムでは、相続登記をせずに放置した際に発生しうるリスクについて、実際にあった事例をもとに解説したいと思います(実際のご相談とは一部内容を変更しています)。

相続登記を放置した事例

相談者Aさんの事例です。

 

40年以上前にAさんの父が亡くなっていましたが、自宅である実家不動産について兄弟Bとの間で遺産分割協議をしておらず、相続登記もしないままとなっていました。

しかし、Bが亡くなり、次いでbも亡くなり、また、bには相続人がいませんでした。その後相続手続のためにAさんが相談に訪れたという事例です。

 

この事例の問題点

Aさんは、自宅不動産を処分してしまいたいと考えているのですが、遺産分割協議をしていなかったため、この不動産はAさんが単独で所有している物件ではなく、Aさん単独では処分できません。共有者の協力があれば、処分も可能なのですが、その共有者である兄弟のBが亡くなり、唯一の相続人bも相続人なくして亡くなったため、共有者不在により処分が困難となってしまいました。

不動産を処分(売却)するためには、新たに不動産を買い受ける人が、正常に名義を取得できるように、不動産の名義を現在の所有者に正しく書き換える必要もあります。しかし、相続が発生した際の名義変更手続きである相続登記を長年放置していたため、複雑な手続きが必要になってしまいました。

 

実際の解決の流れ

亡き父FからA・Bへの相続登記を申請

不動産の名義を正しく書き換えるために、まず、亡き父Fから、その子であるAとBへ、共有持分が2分の1ずつの相続登記を申請する必要があります。この相続登記はA自身にも関係する手続きであるため、Bの協力がなくてもAが単独で申請可能になります。

Bからbへの相続登記の申請

Bの持分は、Bからその子であるbに相続されているので、不動産の名義の変遷を正しく反映させるために、Bからbへの相続登記も必要になるのですが、Bもbも亡くなっており、bには相続人もいないことから、そのままでは、誰もこの相続登記を申請できる者がいないことになってしまいます。

そこで、相続人が存在しない場合に、代わりに相続財産を管理する特別な管理人である「相続財産管理人」を、家庭裁判所に選任してもらう必要があるということになります。相続財産管理人には通常弁護士等が選任されます。

家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てを行い、その者が選任されると、相続財産管理人がbに代わって、Bからbへの相続登記を申請します。また、bへ相続登記を行ったとしても、bも既に亡くなっているため、後の手続きの都合上、bから「亡b相続財産」名義への変更登記も相続財産管理人が申請します。

亡 b相続財産からAへの持分移転の登記申請

相続人が不存在の場合、被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)からの請求があれば、家庭裁判所は、その者に対して相続財産の全部または一部を引き継がせることができます。特別縁故者からの請求がなかったり、申立てが却下されたりしたら、相続財産である不動産の共有持分は他の共有者に帰属することになります。なお、bの死亡から特別縁故者の不存在が確定するまで、早くても13ヶ月以上かかります。

bの特別縁故者がいないことが確定したら、Aが亡b相続財産の共有持分を取得し、相続財産管理人と共同して持分の移転登記を申請できます。その後、実家はAの単独所有になるので、ようやく自分の判断で自由に売却・処分ができるようになります。

 

相続登記を放置していたため多大な負担

手続が複雑になってしまったことの理由の一つには、相続登記をしないまま長い間放置してしまっていたことがあります。最初の相続の際、Aの単独所有という形で相続登記をしておけば、Aが自由に処分することができました。また、Bが亡くなった後も、Aとbで不動産について共有状態を解消してAが単独で所有できるようにきちんと協議をして登記しておけば、裁判手続きの手間や期間を必要とすることを避けられたはずです。

当事務所では、相続登記に関する相談を初回無料にて受けておりますので、相続登記でお困りの方は、お気軽に是非ご相談ください。