第126回相続コラム 注意したい相続登記義務化と改正法の適用範囲
相続登記の義務化についてのコラムを何度かにわたって掲載しております。今回のコラムでも、引き続き相続登記の義務化について、その改正法の適用範囲と注意点について解説したいと思います。
相続登記義務化について改正法施行時期
いわゆる所有者不明土地の発生を防止する観点から、相続登記を義務化する改正法が令和3年4月21日に成立し、施行については、公布後3年以内の政令で定める日とされているので、2024年までを目処に施行される予定です。住所変更登記義務化関係の改正については公布後5年以内の政令で定める日とされていますので、2026年頃に施行される予定です。
そして、改正法が施行され、相続登記が義務化されると、相続登記の申請を怠ると罰則の適用があります。
ここまでのお話は、「第124回相続コラム 相続登記義務化に関する法改正(令和3年4月21日)」および「第125回相続コラム 相続登記の義務化と新設された制度(相続人申告登記)」で詳しく解説しています。
改正法が適用される相続
改正法が施行され、その後に相続が発生した場合、当該相続について相続登記の申請が義務とされ、それを怠ると罰則の適用があるのは当然ですが、改正法が施行される前に相続が発生し、相続登記を申請する前に改正法が施行された場合はどうなるのでしょうか。
一般的に、法改正があると、「施行後の法律関係」に対して改正法が適用されるのが多数であり、施行前の法律関係について改正法が適用されることは多くありません。しかし、今回の相続登記義務化の改正法については、相続の発生が法律の施行前であるか後であるかを問わず、いずれの相続についても適用されます。施行前の相続に適用できないすると、相続登記が行われずに放置されている現状の問題を解決できず、「所有者不明土地問題」を解消できないからです。
改正法施行前の相続についても、改正法施行後は改正法が適用され、相続登記の申請を怠ると罰則の適用があります。
改正法施行前の相続の申請期間
改正法施行前の相続についての相続登記の申請期間は、改正法が施行された日または自分が相続によって所有権を取得したことを知った日の、いずれか遅い方が起算日になり、そこから3年以内に相続登記の申請をする必要があります。
・ 相続開始と所有権取得を知ったとき
・ 改正法の施行日
いずれか遅い方が起算日になり、そこから3年以内に申請。
多くのケースでは、改正法の施行日が起算日となり、そこから3年以内に申請する必要がでてくると思います。例えば、相続したことは知っていたが、特に取得した不動産について処分等は考えていなかったのでそのまま放置していた、というような場合です。
故人と疎遠であり、相続を知らなかった場合や、田舎の山林などで、その不動産を相続した事実を知らなかったような場合には、「相続の開始と所有権取得を知ったとき」を起算日とし、そこから3年以内に申請することになります。
相続対策には早めの準備を
長年ついつい相続しているはずの土地や建物を名義を変更せずにそのまま放置しているという方も少なくありません。相続が何代にもわたっている場合には、相続人を調査するだけでも相当な労力がかかります。いざ改正法が施行されたとしても慌てないためにも、早めの準備をおすすめします。
また、ご自身が放置することによって、お子さんやお孫さんなど、次世代に面倒事を残さないためにも不動産関係の権利関係をすっきりさせることも重要になってきます。
当事務所では、相続や遺言についてのご相談を広く受けております。対応にあたる司法書士は、不動産登記のエキスパートです。相続登記で気になることがあれば、お気軽にご相談下さい。
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