第302回相続コラム 養子の子と代襲相続について基本から解説

相続コラム

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第302回相続コラム 養子の子と代襲相続について基本から解説

第302回相続コラム 養子の子と代襲相続について基本から解説

相続の世界には代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼ばれる制度があり、本来相続人となるはずであった者に代わって、その者の子が相続人となる場合があります。この代襲相続は子が養子であった場合にも発生しますが、養子の子は代襲相続するケースとしないケースがあります。今回のコラムでは、代襲相続の基本や養子と代襲相続との関係について解説するとともに、養子の子が代襲相続するケース、しないケースについて解説したいと思います。

 

代襲相続の基本

代襲相続とは、本来相続人となるはずの者が、被相続人が亡くなる前に死亡していたり、相続権を喪失していたりする場合に、本来相続人となるはずの者の子が代わりに相続する制度です。以下の図は、代襲相続の一例を図解したものです。

例えば、Aさんの遺産は、Aさんの子であるBさんが相続する予定だったのですが、Aさんより先にBさんが亡くなってしまったという場合に、Bさんの子であるCさんが、Bさんに代わってAさんの遺産を相続するというのが代襲相続になります。CさんはAさんから見れば孫にあたりますので、「子の代わりに孫が相続する制度」とイメージするとわかりやすいかと思います。

代襲相続という制度には、遺産を子孫に承継させることで、被相続人の家系を維持させる、という意図があります。また、同じ子孫同士は公平な取り扱いをしたい、という意図もあります。

例えば、上で挙げた例で、AさんにBさんの他にDさんという子がいたとします。そしてDさんにはEさんという子がいたとします。

※上記図は代襲相続という制度がなかった場合の相続図

ここで仮に、代襲相続という制度がない場合、Aさんの遺産はDさんが全て相続することになります。将来的にDさんが亡くなった際には、Dさんの遺産はEさんが相続することになりますので、Aさんの遺産はDさんを経由してEさんへと受け継がれていくことになります。CさんもEさんも同じAさんの孫であるにも関わらず、Bさんの亡くなった時期という偶然の事情により、扱いが異なるのは不公平である、という価値判断が働いています。

 

養子と代襲相続

養子縁組とは

養子縁組とは、法律によって、親子関係を生じさせる制度をいいます。養子縁組によって親になった者を養親(ようしん)、子になった者を養子(ようし)と呼びます。

民法第727条
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

養子縁組が成立すると、その成立の日から、養子と養親は親子になりますので、養子は実子と同じように法定相続人の地位も取得します。

 

養子も代襲相続人となる

養子縁組が成立すると、養子と養親との間に親子関係が発生し、養子も実子も扱いは同じになりますので、養子も代襲相続人となることができます。

例えば、Aさんの遺産は、Aさんの子であるBさんが相続する予定だったのですが、Aさんより先にBさんが亡くなってしまったという場合に、Bさんの子であるCさんが、Bさんに代わってAさんの遺産を相続するというのが代襲相続です。仮にCさんがBさんの養子であったとしても、問題なく代襲相続人として、Aさんの遺産を代襲相続することができるということです。

 

養子の子と代襲相続

養子は実子と同じように代襲相続が可能なのですが、養子の子が代襲相続できるかどうかはケースによって異なります。

結論から言いますと、養子縁組前に生まれた子は代襲相続できませんが、養子縁組後に生まれた子は代襲相続することができます。

 

養子縁組前に生まれた子と代襲相続

養子縁組が成立すると、養子と養親との間に親子関係が発生しますが、養子縁組前に既に養子の子として出生していた者と養親との間に血族関係が発生するわけではないとされています。

上の図で言うと、AさんとBさんは養子縁組によって親子となりますが、その養子縁組の効果はCさんには及ばないということです。

そして、代襲相続について定めた民法第887条2項では、その但書において、被相続人の直系卑属でない者は、代襲相続することができない旨を定めています。

民法第887条第2項
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

このケースでは、Aさんから見たCさんは、特に血族関係にあるわけではありませんので、Aさんの直系卑属にはあたりません。

ですので、仮に、Aさんが亡くなる前にBさんが亡くなっていたとしても、CさんはBさんの代わりにAさんの遺産を代襲相続することはできない、ということになります。

代襲相続という制度には、遺産を子孫に承継させることで、被相続人の家系を維持させる意図があると最初の方で解説しましたが、このケースにおいてAさんから見たCさんは子孫でも何でもないので、代襲相続人にはならないことになります。

 

養子縁組後に生まれた子と代襲相続

養子縁組をすると、養親と養子との間に親子関係が発生しますので、養子縁組後に、養子が子を授かった場合には、その子は養親の孫ということになります。子の子は孫ですので当然と言えば当然です。

ですので、上の図のCさんはAさんの孫(直系卑属)にあたりますので、Aさんが亡くなった際には、代襲相続人となることができます。

 

おわりに

今回のコラムでは、代襲相続の基本や養子と代襲相続との関係について解説するとともに、養子の子が代襲相続するケース、しないケースについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。そもそも代襲相続自体が複雑なのですが、そこに養子縁組による家族関係の問題まで加わることで、より難解で一般の方にとっては理解しにくい内容になってしまうと思います。

令和6年11月12日にも、最高裁において、代襲相続と養子縁組に関連する新しい判例が示されましたが、同判例の事案は、今回解説したコラムのテーマに「傍系」という要素が加わり、より複雑な内容となっています。判例の事案については機会をあらためて解説しようと思いますが、こうした代襲相続や養子縁組が複雑に絡む相続のケースは、現実に存在する問題であることも、今回のコラムで伝えたかったことのひとつです。

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