第35回相続コラム 相続分の譲渡と具体的事例

相続コラム

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第35回相続コラム 相続分の譲渡と具体的事例

第35回相続コラム 相続分の譲渡と具体的事例

お盆といえばお墓参りやご家族で集まる数少ない機会の方も多いかと思います。一度この機会に相続についてご家族でお話あってみるのもいいかもしれません。今回は相続分の譲渡について、具体的な事例をもとに解説していきたいと思います。

相続分とは

相続分とは、プラスの財産とマイナスの財産とを包括した遺産全体に対する相続人の割合的な持ち分のことをいいます。例えば、相続分が2分の1あり、遺産として、不動産・現金・借金があったとすると、その不動産も現金も借金も全て半分ずつ受け継ぐことになります。

この相続分は、相続人は相続開始後、遺産分割が完了する前まで第三者に譲渡することが可能です。遺産分割が完了した場合には、相続分という割合的な持分が、具体的な持分に確定するので、相続分を譲渡するということはできません。

相続分の譲渡と具体的事例

遺言書を作成せずに亡くなった被相続人Aには、実子B、Cと内縁の妻Dがいました。B、Cは二人とも独立していたこともあり、AとDが二人で暮らしていたAの不動産(Aの住宅ローンが残っていました)はDに譲渡してそのまま住んでもらいたいと考えていました。

このような場合にどのような遺産分割協議をすればよいのでしょうか。

DはAの相続人ではないため、本ケースではAからDに直接不動産を相続することができません。このような場合、共同相続人による共同相続人以外の者への相続分の譲渡という方法が考えられます。

本ケースの場合、B、Cはそれぞれの不動産の相続分を遺産分割完了前までDに譲渡することができます。本来内縁の妻であるDは共同相続人に該当しませんが、共同相続人のB及びCがDに相続分を譲渡することで、Dが遺産分割協議に加わることができるようになります。

相続分の譲渡は、相続人たる地位の譲渡なので、譲渡の当事者間で債務も移転することとなります。本ケースでも、不動産をDがB、Cから譲り受けると同時に、DがB、Cに対して今後の住宅ローンの履行を引き受けることとすることが可能です。ただし、このような協議は債権者の関与なく行われますので、対外的に譲渡人が債務を免れることはできません。つまりB、Cは銀行から本件住宅ローンの支払いを銀行から求められたときに「相続分をDに譲渡したのでDに請求してください」と弁済を拒むことはできません。

不動産登記の流れは次のようになります。まずAから不動産の所有権をB及びCに移転します。そしてさらにB及びCからDに所有権を移転します。AからDに所有権移転するためには複数の登記手続が必要になるので注意が必要です。また相続税、譲渡所得税、贈与税等についても考慮する必要があります。

遺言の重要性

今回は具体的な事例を挙げて解説しましたが、実際の相続の問題になると、財産も人間関係もより複雑になり、その手続きも難しくなるケースが多々あります。今回のケースでは、遺言を作成しなかった場合を想定していましたが、実は遺言を作成しておけばこのような複雑な手続きは不要になります。お盆ということでご家族で集まる機会のある方は、一度今度のことや相続のことを話合ってみるのも大事だと思います。