第292回相続コラム お腹の子ども(胎児)は相続人になれるのか

相続コラム

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第292回相続コラム お腹の子ども(胎児)は相続人になれるのか

第292回相続コラム お腹の子ども(胎児)は相続人になれるのか

妻の妊娠中に、不幸にも夫が亡くなってしまったという場合、お腹の子ども、胎児にも相続権はあるのでしょうか。今回のコラムでは、胎児の相続権について、注意すべきポイントなども交えて解説したいと思います。

 

お腹の子、胎児の相続権

結論から言いますと、お腹の子、胎児にも相続権は認められます。

本来、人が権利を有したり、義務を負ったりすることができるのは、出生後となりますが、相続に関しては、胎児は既に生まれているものと法律上みなされますので、通常の子と同じように相続権が認められることになります。

民法第3条
私権の享有は、出生に始まる。

民法第886条1項
胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。

 

胎児に相続権が認められる条件

胎児に相続権が認められるためには、実際に、生きて生まれてくることが条件となっており、出生前に亡くなってしまった場合には、胎児に相続権はなかったことになります。

民法第886条2項
前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

例えば、9月23日に夫が亡くなり、その時点で妻は妊娠していたとします。そして、その妻が夫の子を10月1日に出産したという場合、生まれた子は、本来10月1日から、権利義務の主体となれる地位を取得するので、生まれる前の9月23日に発生した相続については相続人になれないようにも思えますが、民法第886条1項により、相続については既に生まれていたものとして扱われるため、相続発生後に生まれた子にも相続権が認められることになります。

それに対して、上記の子が、不幸にも出産の前に、母親のお腹の中にいる状態で亡くなってしまった場合には、民法第886条2項により、1項の適用が無くなるため、原則どおり、9月23日の時点で生まれていなかった子には相続権が認めれないことになります。

つまり、胎児は、自分がまだ生まれていない時点で発生した相続についても、相続権を有しますが、生きて生まれないと相続権を失うということになります。

 

遺産分割協議は生まれるまで待つ

胎児が無事出産されると、その子は相続人になるため、胎児が無事に生まれてくるか否かによって相続人の順位が変動したり、その数が増減することになります。ですので、胎児が生まれる前に遺産分割協議などを行ってしまうと、その協議自体が、相続人全員の合意がない協議として無効となり、やり直しになってしまうおそれがありますので、遺産分割協議等の相続手続きは、胎児が無事生まれてくるまで待つことをおすすめします。

 

胎児が無事生まれた後には特別代理人が必要になる

胎児が無事生まれて相続人になったとしても、生まれたばかりの赤ん坊が遺産分割協議を行うことはできないため、代理人が協議に参加することになります。

通常は、親権者である親が子の代理人となるはずですが、遺産分割協議は、親と子の利益が相反するおそれがありますので、そのようなケースでは、親は子の代理人となることはできないため、特別代理人と呼ばれる、文字通り特別な代理人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

特別代理人について詳しい解説は「第19回相続コラム 未成年者がいる場合、遺産分割で必要になる!?特別代理人とは」をご覧ください。

 

相続税法上の胎児の扱いは異なる

相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要がありますが、この申告期限内に胎児が出生しない場合には、胎児はいないものとして相続税を計算することになります。

具体的には、他の共同相続人の相続分については、胎児がいないものとして相続分を計算しますし、相続税の基礎控除については、胎児は頭数にいれずに計算します。相続法(民法)と相続税法では、胎児の扱いが異なるので注意が必要です。

■相続分の計算[参考:国税庁ホームページ]
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/01.htm#a-11_2_3

■基礎控除の計算[参考:国税庁ホームページ]
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/04.htm#a-15_3

なお、相続税の申告期限後に胎児が出生した場合、胎児であった子の相続税申告の期限は、法定代理人が胎児の出生を知った日の翌日から10ヶ月以内となります。

 

おわりに

今回のコラムでは、胎児の相続権について、注意すべきポイントなども交えて解説しましたが、いかがだったでしょうか。子の妊娠中に相続が発生するというケースは、稀なケースではありますが、妊娠中や生まれたばかりの子の世話で大変な中、相続に関する手続きを進めるのは容易ではありません。また、胎児が絡む相続の手続きは複雑になってしまうことも少なくないため、そのようなケースでは、相続の専門家に手続きを依頼するのも一つの手段です。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、不要な土地を相続してお困りの方はもちろん、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。