第94回相続コラム 徹底解説 実印と印鑑証明書
今回のコラムでは、相続手続の際にもしばしば登場する個人の実印と印鑑証明書についてよくいただく質問にお答えします。意外と知らない実印と印鑑証明書について徹底解説します。
実印とは何ですか?いわゆる認印や銀行印との違いは何でしょうか?
実印とは居住地の市区町村に印鑑登録されたハンコのことをいいます。印鑑登録されていないハンコ、個人が日常生活上使用するハンコのことを一般に認印と呼んでいます。
預金口座を開設した銀行などで登録したハンコのことを銀行印と呼びます。銀行印として利用しているものを実印として印鑑登録することも可能ですが、一般的には実印と銀行印は別のハンコをそれぞれ登録している方が多いようです。
実印:居住地の市区町村に印鑑登録されたハンコ
認印:印鑑登録されていないハンコ、個人が日常生活上使用するハンコ
銀行印:預金口座を開設した銀行などで登録したハンコ
印鑑証明書とは何ですか?どこで取得できますか?
「その印影の印鑑が、自治体で本人が登録した『実印』である」ことを証明する書類です。住所地の役所や証明サービスコーナー等で取得できます。また、2020年10月現在、全国の758市区町村で、マイナンバーカードを持っているとコンビニ等で印鑑証明書を取得することも可能です。
まだ印鑑登録をしていない場合は、最初に印鑑登録をすることが必要です。その市区町村に住民登録しており、15歳以上であれば、実印を登録することができます。市区町村をまたぐ引越をした場合は新住所であらためて印鑑登録をする必要があります。
印鑑登録:本人の実印を市区町村で登録できる
印鑑証明書:登録した実印が本人のものであることを証明する書類
実印は高価な印鑑でなければいけないのでしょうか?印影はどのようなものが良いのでしょうか?
形には特に制限がありませんが、大きさが一辺8mmから25mmの正方形に収まる必要があり、ゴム印や外枠がないものでは登録できません。旧姓等の名前と違う字のハンコや名前と関係ない模様のハンコも登録が認められないことが多いようです。
司法書士事務所では頻繁に印鑑証明書をお預かりしますが、姓だけ、名だけ、氏名全て、等々色々なものを目にします。いわゆる三文判のようなハンコを実印としている方も見受けられますが、あまり良いこととは思われません。
大きさが一辺8mmから25mmの正方形に収まるサイズ
ゴム印・外枠がないものは登録できない
名前と違う字や名前と関係ない模様は登録できないことが多い
実印はどのようなときに使うのでしょうか?
日本では主に以下のような場面で実印での押印が求められます。実印の押印を求められる際は同時に印鑑証明書の提出を求められることがほとんどです。
・不動産取引をするとき
・住宅ローンを契約するとき
・自動車を購入するとき
・遺産相続をするとき
・公正証書を作成するとき
・会社の発起人となるとき
印鑑証明書に期限はあるのでしょうか?
書類自体に有効期限が定められているわけではありませんが、提出先の金融機関によって3ヶ月から半年等の期限が設けられている場合があります。登記のために法務局に提出する際は、用途によって3ヶ月の有効期限がある場合とない場合があるので、司法書士の指示に従うようにしてください。
印鑑証明書自体に期限はない
提出先によって期限が設けられている場合があるので、提出先等の指示に従う
実印を失くしてしまったらどうすれば良いのでしょうか?
実印は印鑑証明書とセットでなければあまり意味がないので、実印だけが見当たらない場合に慌てる必要はありませんが、例えば、併せて保管していた実印と印鑑登録証(又はマイナンバーカード)が両方とも見当たらないような場合は、速やかに役所で印鑑登録を廃止するべきでしょう。
実印の重要性
昨今「ハンコ廃止」がよく話題になっていますが、少なくても現在の日本では「実印」と「印鑑証明書」は「本人確認」や「意思確認」において重要な役割を果たしています。実印を押印するときは、その書類の内容をよく理解した上で押印することが非常に重要です。内容を理解しないまま白紙委任状に実印を押印して印鑑証明書と一緒に相手に渡してしまう、などということは絶対に避けるべきでしょう。
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