第295回相続コラム 相続を辞退、遺産を受け取らない方法

相続コラム

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第295回相続コラム 相続を辞退、遺産を受け取らない方法

第295回相続コラム 相続を辞退、遺産を受け取らない方法

相続が発生すると故人の遺産を相続人が相続することになるのが原則ですが、例えば、「自分は故人に迷惑をかけっぱなしだったので相続を辞退したい」、「親の面倒を最後まで看ていた兄弟姉妹に遺産を譲りたい」等の理由から、相続を辞退したい、遺産を受け取りたくないというケースも存在するかと思います。今回のコラムでは、相続を辞退、遺産を受け取らない方法について解説したいと思います。

 

相続を辞退するには手続きが必要

人が亡くなると、自動的に法律によって相続が発生しますので、遺言等がなければ、被相続人が亡くなった瞬間に相続人は遺産を相続することになります。

ただ、相続が発生していると言っても、遺産分割協議をまだ行っていない段階では、誰がどの遺産をどのような割合で相続するのかは未確定であり、法定相続分という抽象的な割合で遺産を相続人間で共有している状態にすぎないため、具体的な相続の内容を決める遺産分割協議において、自身の相続分を0とすれば、相続を辞退する結果となります。

つまり、遺産分割協議において、自分の『相続分を0にする』=『相続分を放棄』することによって相続を辞退することが可能となります。

また、相続手続きの中には、「相続放棄」という制度があります。相続放棄は、主に、被相続人が残した借金等の負の遺産がある場合に利用される制度ではありますが、相続放棄をすると、放棄をした相続人は、「初めから相続人とならなかった」ものと法律上みなされますので、借金はもちろん、プラスの財産・遺産も相続することがなくなります。

つまり、相続放棄をした場合にも、相続を辞退する結果となります

なお、故人が遺言をのこしていた場合には、その遺言に従って遺産を分配することになるので、仮に、遺言によって、自分以外の相続人に遺産が分配されていた場合には、辞退とは異なりますが、遺産を受け取ることはなくなります。自分が遺産を受け取りたくないには、予め被相続人に自分以外の相続人に遺産を相続させる旨の遺言をのこしておいてもらうと、手続きが簡易化されるため、非常に有効な手段となります。

■相続は自動的に発生するので相続を辞退するには手続きが必要となる。
■相続を辞退する方法には、①遺産分割協議において『相続分を放棄』する方法と、②家庭裁判所において行う『相続放棄』という方法がある。
■自分以外の相続人に遺産を相続させる旨の遺言があり、遺留分等を特に主張しなければ、遺産を受け取らない結果となる。

 

相続を辞退する手続き

①遺産分割協議において『相続分を放棄』する方法

相続分を放棄するための手続きは、後述する『相続放棄』とは異なり、特別な様式等は法律上定められていません。

ですので、遺産分割協議の場において、相続分を放棄する旨の意思表示を行い、他の相続人の合意が得られれば、それだけで相続分を放棄したことになります。

なお、遺産分割協議が有効に成立した場合、その協議結果に基いて他の相続人が様々な相続手続きを進めることになるため、遺産分割協議書を作成するのが一般的ですが、相続分を放棄した相続人も、遺産を受け取らないとはいえ、相続人であることには変わりないので、遺産分割協議の内容に合意する場合には、遺産分割協議書に署名・捺印する必要があります。

 

②家庭裁判所において行う『相続放棄』

相続放棄を行うためには、家庭裁判所にてその手続きを行う必要があり、また、相続放棄には期限が設けられており、「自己のために相続の開始があったことを知った時から」3ヶ月以内に行う必要があります。

相続放棄は、相続分の放棄とは異なり、家庭裁判所という公の機関で行う手続きのため、手続き的なハードルは高くなりますが、その分、相続放棄を行った場合の効力は“強力”となります。

具体的には、相続放棄を行うと、初めから相続人ではないことになるため、遺産分割協議等に参加する必要がなくなります。また、相続放棄の効力は、他の相続人以外にも主張できるため、仮に、故人の債権者から借金等の請求を受けたとしても、「自分は相続放棄したので相続人ではない」として、請求を退けることができます。

それに対して、相続分の放棄は、いわば相続人間の取り決め、身内同士の取り決めとなるため、対債権者との関係では、効力が制限されます。つまり、故人の債権者から借金等の請求があった場合に、相続分を放棄したことを理由に請求を拒むことはできませんので注意が必要です。

また、相続放棄をすると、その放棄をした相続人は、はじめから相続人ではなかったことになるため、他に同一順位の相続人がいない場合には、相続人の順位が変動し、後順位の相続人に相続権が移る場合がありますので、「自分は相続を辞退したいけど、後順位の相続人に相続権が移るのは困る」という場合には、相続放棄ではなく、相続分の放棄を選択することになります。

 

相続を辞退する手続きのメリット・デメリット

遺産分割協議において『相続分を放棄』する方法と、家庭裁判所において行う『相続放棄』という方法のメリット・デメリットをまとめると下記の表のようになります。

相続放棄と相続分の放棄の違いについて詳しく知りたい方は、「第240回相続コラム 相続分の放棄とは何か 相続放棄との違いも解説」をご覧ください。

なお、特定の相続人に遺産を譲りたいという場合には、相続を辞退(相続分を放棄)するのではなく、相続分を譲渡するという方法もあります。相続分の譲渡について詳しくは、「第241回相続コラム 相続分の譲渡と相続分の放棄の違いについてまとめ」をご覧ください。

 

おわりに

今回のコラムでは、相続を辞退、遺産を受け取らない方法について解説しましたが、いかがだったでしょうか。相続分の放棄と相続放棄、それぞれのメリット・デメリットをよく比較検討した上で、ご自身に適した手続きを選択するようにしましょう。故人に借金等の負債がない場合には『相続分の放棄』をする方が手続き的には簡単になります。故人に負債がある場合や「一切、他の相続人と関わりたくない」という場合には、相続放棄を検討するのが有力となりますが、その際には、後順位者への影響も考慮する必要があります。

どの手続きがご自身に適しているかわからないという方は、相続の専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、不要な土地を相続してお困りの方はもちろん、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。