第288回相続コラム 相続土地国庫帰属制度の運用状況

相続コラム

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第288回相続コラム 相続土地国庫帰属制度の運用状況

第288回相続コラム 相続土地国庫帰属制度の運用状況

令和5年4月27日から相続土地国庫帰属制度という新しい制度がスタートし、先日8月19日に、法務省より同制度の運用状況に関する統計が発表されました。今回のコラムでは、相続土地国庫帰属制度について、概要を簡単におさらいしつつ、同制度の運用状況について解説したいと思います。

 

相続土地国庫帰属制度とは

土地を相続したけれど、「遠くに住んでいるので利用する予定がない」、「ご近所に迷惑をかけないように維持・管理するのが大変」、「固定資産税の負担が大きい」等の理由から、不要な土地を手放したいというニーズは以前からありました。

また、上記のような土地は、だんだん管理が面倒になって、放置されるようになったり、不要な土地を放置し続けた結果、誰の所有物か不明になってしまうという、いわゆる『所有者不明土地問題』の原因のひとつとなっていました。

土地が管理されないまま放置され、将来、「所有者不明土地」となってしまうことを予防するために、一定の要件の下で、相続した不要な土地を国に手放すことができるようにしたのが、相続土地国庫帰属制度となります。

相続土地国庫帰属制度について詳しい解説は、
第200回記念相続コラム 相続土地国庫帰属制度」をご覧ください。

 

相続土地国庫帰属制度の運用状況

法務省の統計によると、令和6年7月31日時点において、相続土地国庫帰属制度の運用状況は以下のようになっています。

 

総申請件数・地目別申請件数

総申請件数
2,481

地目別申請件数
田・畑:930件
宅 地:889件
山 林:391件
その他:271件

総申請件数2,481件に対して、田畑の申請件数が930件と最も多く、申請全体の約37%を占めております。

田畑の申請が最も多い要因として、農地を相続した人が必ずしも農家を継ぐとは限らず、また、農地はそのまま売却するのも転用して売却するのも、売却の際に、売却先が限定されたり、農業委員会等の許可が必要であったりと、処分することが難しいため、不要な土地として申請の対象となっているものと推測されます。

 

帰属件数

総数
667件

種目別帰属件数
宅地:272件
農用地:203件
森林:20件
その他:172件

申請件数では、田畑の申請が最も多かったのに対して、帰属が決定した種目では、現状では、宅地が最も多くなっています。

 

却下件数・不承認件数

却下件数
11件

不承認件数
30件

相続土地国庫帰属制度を利用するためには、いくつか満たすべき要件が法律で定められており、それらを満たさない場合には、申請が却下ないし不承認となります。

具体的には下記の10項目のいずれにも該当しないことが要件となっており、下記項目のいずれかに該当してしまうと申請は却下ないし不承認となります。

①建物の存する土地
②担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路など他人による使用が予定されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地
⑤境界が明らかでないなど、所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地
⑥崖がある土地のうち、管理に過分の費用または労力を要する土地
⑦管理・処分を阻害する工作物、車両、樹木などが地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟をしなければ使えない土地
⑩その他、管理・処分に過分の費用または労力を要する土地

 

申請取り下げ件数

申請取り下げ件数
333件

相続土地国庫帰属制度を利用するために申請を行ったものの、その申請を取り下げた件数が333件あります。

審査の途中で、却下ないし不承認相当であることが判明したため、自ら取り下げたというケースもあるようですが、「自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した」、「隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった」、「農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった」等の活用の見込みがついたため、取り下げたというケースもあるようです。

参照:法務省HP『相続土地国庫帰属制度の統計』
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html

 

おわりに

今回のコラムでは、相続土地国庫帰属制度について、概要を簡単におさらいしつつ、同制度の運用状況について解説しましたが、いかがだったでしょうか。制度運用開始から1年以上経過しましたが、相当数の申請件数があることから、相続した土地について負担に感じ、「手放したい」というニーズが高いことが窺えます。

相続した土地については、名義の変更、相続登記も義務化されていますので、相続した土地についてお悩み・お困り事のある方は、相続の専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、不要な土地を相続してお困りの方はもちろん、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。