第204回相続コラム 相続人の全員が相続放棄した場合、相続財産の管理はどうなるのか?相続財産管理人について解説

相続コラム

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第204回相続コラム 相続人の全員が相続放棄した場合、相続財産の管理はどうなるのか?相続財産管理人について解説

第204回相続コラム 相続人の全員が相続放棄した場合、相続財産の管理はどうなるのか?相続財産管理人について解説

故人が多額の借金を残していた場合、そのままでは相続人がその借金を背負うことになってしまうため、多くの場合、相続放棄を検討されることになります。相続放棄を選択すると、借金を受け継ぐことはなくなりますが、相続人全員が相続放棄を選択した場合、借金を含めた故人の遺産はどうなるのでしょうか。今回のコラムでは、相続人全員が相続放棄をした場合の故人の遺産の管理や相続財産管理人について解説したいと思います。

 

相続放棄をしても相続財産を継続して管理する義務がある

相続放棄を選択すると、その放棄をした者は「初めから相続人とはならなかったもの」とみなされますので、借金等を受け継ぐことはなくなります。ただし、相続放棄をしたからといって、残された遺産について、「私はもう一切無関係」ということにはならず、それらの遺産を放置することはできません。

故人に多額の借金が残されていたとしても、例えば、不動産や有価証券、貴金属なども残されていることがありますので、それらのプラスの遺産を、管理者が引き継ぐまでは、継続して管理する必要があります。

この管理義務を怠り、遺産を滅失・毀損、減少させた場合には、債権者などから損害賠償請求されるおそれがありますので、注意が必要です。

 

民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

 

相続人が全員相続放棄した場合の相続財産管理人

ある方の相続について、相続放棄をした者と相続放棄をしなかった者とがいる場合、相続放棄をした者は、相続放棄をしなかった相続人が相続財産の管理を引き継ぐまで遺産の管理を継続することで足ります。

しかし、相続人全員が相続放棄をすると、相続財産の管理を引き継ぐ者が誰もいなくなってしまうため、管理の引継ぎを行うためには、家庭裁判所に申し立てを行い、「相続財産管理人」という特別な管理者を選任してもらう必要があります。つまり、相続放棄をしたとしても、相続財産の管理は引き続き行う必要があり、相続財産の管理を免れるためには、相続財産管理人の選任が必要になるということです。

相続財産管理人の選任申し立ての際には、相続財産管理人が遺産の調査をしたり、遺産を管理・売却するための費用や管理人への報酬などが必要になります。それらを相続財産から捻出できればいいのですが、不足分が出る可能性がありますと、相続財産の種類や額によって変わりますが、通常、数十万円~100万円程度の予納金を裁判所に収める必要があります。

上記の費用の問題から、実務上、相続放棄をしたはずの相続人が遺産の管理を継続し続けるというケースもよく見られます。

管理が面倒だからといって、勝手に相続財産を処分などしてしまうと、法定単純承認とみなされ、借金等を相続することになるおそれもありますので、注意が必要です。

 

おわりに

相続放棄によって、多額の借金を相続してしまうという事態からは免れたとしても、その後、相続財産の管理をどうしたらいいのか気になる方も少なくないため、今回のコラムでは、相続放棄後の相続財産の管理や相続財産管理人について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

相続放棄は、3ヶ月という短い期間で行う必要もあり、葬儀やその他の手続きで、時間的な余裕がないことも珍しくありません。相続放棄でお悩みの方は、相続問題に強い専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、相続放棄を含む相続問題に関する相談を広く受け付けております。相談は初回無料となっておりますので、相続放棄についてお悩みのある方は、お気軽にご相談ください。