第177回相続コラム 相続放棄した場合でも生命保険を受け取ることはできるのか

相続コラム

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第177回相続コラム 相続放棄した場合でも生命保険を受け取ることはできるのか

第177回相続コラム 相続放棄した場合でも生命保険を受け取ることはできるのか

故人に多額の借金があった場合、その借金を相続しないためには、相続放棄という手続きをすることになります。相続放棄をすると、相続人ではなくなるため、遺産を相続することができなくなりますが、借金等の負債を背負うこともなくなります。では、相続放棄をした場合には、生命保険も受け取ることができなくなるのでしょうか。今回のコラムでは、相続放棄しても、生命保険を受け取れるケースについて解説したいと思います。

 

生命保険を受け取ることのできるケース

受取人が指定されているケース

生命保険を契約する際には、その保険金の受取人を指定するのが通常です。保険金の受取人が指定されている場合には、その受取人が相続放棄を選択してたとしても、生命保険金を受け取ることが可能です。

相続放棄をすると、その効果として、相続放棄した者は「初めから相続人とならなかったもの」とみなされますので、故人の遺産を相続する権利を失います。しかし、生命保険金を受け取る権利は、保険会社との保険契約によって発生する受取人固有の権利ですので、相続放棄によって失われるものではありません。

例えば、夫が生命保険の契約者・被保険者であり、その妻が保険金の受取人となっているというケースで、夫が多額の借金を残して亡くなり、相続人である妻が相続放棄をしたとしても、妻は保険金を受け取ることができます。

 

受取人が法定相続人となっているケース

生命保険を契約する際の受取人ですが、具体的な人物を特定することなく、「相続人」などと記載されている場合があります。

この場合、相続放棄の効果により、法律上、相続人ではなくなった者は、生命保険金も受け取ることができなくなるようにも思えますが、このようなケースでも生命保険金を受け取ることができるというのが裁判所の考え方です。

生命保険金を受け取る権利が発生するためには、その受取人が誰であるかを特定する必要がありますが、受取人が「相続人」との記載であったとしても、契約者の意思として「自分が亡くなった時点の相続人」を指定していることが読み取れるため、実際に相続をするか否かとは無関係に、受取人固有の権利が発生すると言えるからです。

 

参考:最高裁判所第三小法廷昭和40年2月2日判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57731

 

生命保険を受け取ることのできないケース

生命保険の受取人が、亡くなった故人となっている場合には、相続人が相続放棄した場合には、保険金を受け取ることはできません。

保険金の受取人が故人の場合には、保険金は故人の遺産となるため、それを受け取るためには、相続による権利の移転が必要となりますが、相続放棄によって相続人とはならなかった以上、権利を引き継ぐことはなくなるからです。

例えば、生命保険の解約返戻金などは、故人の遺産となりますし、満期返戻金なども受取人は故人となっているのが通常です。生命保険ではありませんが、医療保険の入院給付金なども、受取人は故人となっていることが多くあり、その場合も、相続放棄をすると、給付金を相続人が受け取ることはできません。

 

生命保険と相続放棄のポイント

相続放棄をした際に、生命保険金を受け取ることができるか否かは、その受取人が誰であるかを確認することで判断することができます。

受取人が指定されている場合、保険金はその受取人固有の権利となりますので、相続放棄しても受け取ることが可能となります。

受取人が故人の場合には、相続人が保険金を受け取るためには、故人に帰属すべき権利を相続を介して相続人に移転させる必要があるため、相続放棄をすると、保険金を受け取ることはできません。

遺産に手をつけてしまうと、法定単純承認になり、相続放棄ができなくなる危険性がありますので、その意味でも、生命保険の受取人をしっかりと確認し、そのお金を請求してもよいものかどうか確認することは重要となります。

 

相続放棄で悩んだら専門家に相談

相続放棄の手続きは、家庭裁判所で行う必要があり、また、相続開始後3ヶ月以内という短い期間で手続きを行う必要があるため、相続放棄に関することで悩んだら専門家に相談することをオススメします。

当事務所は、数多くの相続問題に携わってきた実績があり、相続に関するご相談は、初回無料にて行っております。相続放棄には短い期間制限がありますので、お早めにご相談ください。