第169回相続コラム 路線価によらない課税は適法 2022年4月19日最高裁判決

相続コラム

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第169回相続コラム 路線価によらない課税は適法 2022年4月19日最高裁判決

第169回相続コラム 路線価によらない課税は適法 2022年4月19日最高裁判決

2022年4月19日に、不動産の相続税をどのように算定するのか、その評価基準について争う裁判について、最高裁で判決が下されました。今回のコラムでは、今回の裁判について、あらためて争点を整理しつつ、最高裁で下された判決の内容について解説したいと思います。

 

路線価vs例外適用

国税庁の通達では、土地などの不動産の価値は、国税庁が毎年発表している「路線価」を用いて評価するとしていますが、路線価に基いて評価することが「著しく不適当」な場合には、税務署は独自に再評価できるという例外規定を設けています。

今回の裁判では、路線価に基いて相続した不動産を評価し、相続税の申告をした相続人側と、その申告額が「著しく不適当」として、独自に鑑定評価し、追徴課税した国側との争いという構図になります。

 

相続人側の主張

相続税法では、実は、遺産として相続した財産の価額は「取得の時における時価」によると定めるのみで、具体的な評価方法はありません。具体的な評価方法を示している国税庁の通達では、原則、不動産は「路線価」で評価するものとなっていますし、また、例外規定の適用基準は「著しく不適当」な場合という曖昧な基準しかありません。

通常、適用されるであろう「路線価」を用いて、相続財産の価額を評価し、申告しているのにも関わらず、どのような場合が「著しく不適当」なのか、その基準が不明瞭なまま自身にのみ例外規定を適用し、追徴課税を行うのは、平等原則違反であるというのが相続人側の主な主張と言えます。

 

最高裁の判断

最高裁の判断を要約すると下記のようになります。

税務署が通達に従って、画一的に評価を行っていることは公知の事実であるので、特定の者の相続財産の価額についてのみ、路線価の適用を否定し、例外規定により価額を再評価するのは、たとえ再評価した価額が時価を超えないとしても、合理的な理由がない限り、平等原則違反となるとしつつも、「画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合」には、例外規定を適用する合理的な理由があるといえるため、路線価以外で再評価しても平等原則違反にはならない。

判決文 – 全文
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/105/091105_hanrei.pdf

簡単に言うと、特定のケースだけ「路線価」以外で価額を評価するのは確かに平等原則違反となるが、例外規定を適用するだけの合理的な理由=「路線価を適用してしまうと実質的な租税負担の公平に反してしまうという事情」があれば問題ないという判断です。

 

そして、今回のケースでは、

■相続税対策目的で、不動産の購入やその資金の借入が行われた
■それらの購入・借入がなければ課税価額は6億円を超えるものであった
■通常通り路線価で計算すると、課税価額が約2800万円となり著しく価額が乖離
■基礎控除などを差し引くと最終的な申告額が0円となってしまう

などの理由から、そのまま路線価で価額を評価してしまうと、通常の納税者(上記のような対策を講じない納税者)と不均衡が生じ、実質的な租税負担の公平に反するため、例外的な路線価によらない評価を適法としました。

結果、相続人側の主張は認められず、例外規定を適用し、再評価した価額に基いて追徴課税されることになりました。

 

不動産購入による相続税対策は慎重に

今回の判決では、例外規定が適用される具体的な基準は示されなかったため、不動産購入による相続税対策は、慎重に行う必要があります。特に、いわゆる「タワマン節税」などは、路線価と実勢価格との乖離が著しいためリスクが高くなります。「節税」目的以外の合理的な理由がないのに 融資を受けて不動産を購入するのも避けるのが無難です。

相続税対策をされる方は、税理士等の専門家に相談の上、どのような対策をとるべきか、慎重に検討することをオススメします。