第160回相続コラム 具体例で学ぶ配偶者居住権 利用が想定されるケースを解説

相続コラム

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第160回相続コラム 具体例で学ぶ配偶者居住権 利用が想定されるケースを解説

第160回相続コラム 具体例で学ぶ配偶者居住権 利用が想定されるケースを解説

令和2年4月1日から施行された配偶者居住権という新しい制度。施行されて間もないため、どのようなケースで活用すればいいのか、いまいちピンとこないという方もいらっしゃるかと思われます。今回のコラムでは、具体例を挙げつつ、配偶者居住権の利用が想定されるケースを解説したいと思います。

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、一定の要件のもとに終身または一定期間、無償で住み続けられる権利のことをいいます。

この配偶者居住権は、建物の価値を「自宅に住む権利(居住権)」と「それ以外の権利(所有権)」に分離し、居住権を配偶者に相続させ、所有権を他の相続人に相続させることによって、残された配偶者が住む場所に困らないようにするための制度です。

詳しくは「第155回相続コラム 令和2年4月1日から施行された配偶者居住権とは」をご覧下さい。

 

配偶者居住権の利用が想定されるケース

自宅不動産以外にめぼしい財産がないケース

相続財産として、自宅と多少の現預金しかないというケースでは、配偶者居住権の活用が期待されます。

例えば、夫が亡くなり、相続人として、その妻と子がいるとします。

妻としては、夫と過ごした自宅にそのまま住み続けたいと望んだとしても、そのまま法定相続分に従って自宅と現預金を遺産分割すると、子の希望によっては、自宅を売却せざるを得ない状態に陥ってしまいます。

そこで、遺言等によって、妻に配偶者居住権を設定し、子に自宅の所有権を相続させると、妻はそのまま自宅に住み続けることが可能となり、他方で、子も自宅の所有権を取得することになり、多少なりとも財産的価値を取得することができます。また、現預金に関しても、相続人間で等しく分けることができるため、妻は、自宅に住みつつ現預金も取得できることになり、当面の生活費の心配もなくなります。

 

配偶者と他の相続人が不仲のケース

上記のようなケースで、配偶者と他の相続人が不仲の場合には、特に問題が顕在化しやすいため、配偶者居住権を積極的に活用したいところです。

仮に、妻と子の仲が良好であれば、配偶者居住権を設定しなかったとしても、問題が顕在化しないケースも多くなります。

例えば、自宅不動産を、持分1/2ずつで共有し、子が自身の母が自宅に無償で住むことを容認すると、配偶者居住権等を設定しなかったとしても、妻はそのまま自宅に住み続けることができます。また、子は最終的に母の相続人となり、また、仮に母が生活に困窮すると扶養義務が発生する関係にあるため、父からの相続に関しては、全て母に譲るという選択も可能です。

ところが、両者の関係が不仲であり、特に遺言等もなければ、法定相続分通りに、遺産を分けることになるため、残された配偶者が自宅に継続して住み続け、かつ、現預金も多少なりとも取得するという結果には、まずならないと思われます。妻に代償分割するに足りる個人資産がなければ、自宅を売却し、その代金と現預金を他の相続人と分配するという結果になるのが大多数のケースと思われます。

配偶者の家系に自宅を譲りたくないケース

先祖代々受け継いできた家を所有する者に後継ぎの子がいない場合に、配偶者の居宅を確保しつつ、自身の家系の者に家を継がせたいといったケースで、配偶者居住権が活用できます。

例えば、Aさんには妻がいますが、夫婦の間には子がいません。Aさんには先祖代々受け継いできた自宅がありますが、Aさんの死後、妻の住居は確保したいが、妻に自宅が不要になった際には、弟に家を継いで欲しいと考えたとします。

遺言等で、妻には配偶者居住権を設定し、弟に自宅の所有権を相続させると、Aさんの希望通りに、妻はそのまま自宅に住み続けることが可能になり、また、妻が亡くなったり、自宅が不要になった際には、弟が完全な所有権を取得することになり、自身の家系のものに家を継がせることができます。

 

相続税を節税したいケース

本来の配偶者居住権の利用用途とは異なりますが、上手に活用すると配偶者居住権を設定することによって相続税を節約することができます。そのような用途で配偶者居住権を利用することも想定されます。

詳しくは、「第156回相続コラム 配偶者居住権を利用すると相続税対策になる?利用の際の注意点についても解説」をご覧下さい。

 

配偶者居住権に興味ある方はご相談を

今回のコラムでは、配偶者居住権の利用が想定されるケースをいくつかご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

当事務所では、遺言や相続に関する相談を広く受けており、配偶者居住権についてのご相談もお待ちしております。初回相談は無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。