第101回相続コラム 自筆証書遺言の落とし穴!?注意したい「添え手」について

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第101回相続コラム 自筆証書遺言の落とし穴!?注意したい「添え手」について

第101回相続コラム 自筆証書遺言の落とし穴!?注意したい「添え手」について

自筆証書遺言を作成するためには「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」(民法第968条)とされています。つまり、自書=自分で書くことが必要になります。では、高齢者などが自力で自書をするのが困難な場合、他人に自書の手伝い(添え手)をしてもらった遺言書は有効なのでしょうか?

 

自筆証書遺言の添え手についての裁判例

昭和62年10月8日最高裁判決は、他人の「添え手」による補助を受けてされた自筆証書遺言の「自書」の要件について、以下の3つの基準を示して、全てを満たしていた場合にのみ遺言書が有効であるとしました。一つでも条件を満たさないと遺言が無効になってしまいます。

1 遺言者が証書作成時に自書能力を有していたこと

2 他人の添え手が、単に始筆又は改行にあたり、又は字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであること

3 2のように他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できること

なお、この最高裁判決の事案では、妻が本人の手の震えを止めるため背後から手の甲を上から握って支えをしただけでは、遺言者は到底本件遺言書のような字を書くことはできず、本人も手を動かしたにせよ、妻が本人の声を聞きつつこれに従って積極的に手を誘導し、妻の整然と字を書こうとする意思に基づき本件遺言書が作成された、との認定に基づいて、この自筆証書遺言は無効と判断されました。

 

自書能力が必要

自筆証書遺言の作成にあたっては、遺言を残す意思があることや遺言の内容を理解していることだけでは足りず、あくまで「自書」できる能力が求められているのです。

実際に、裁判例が示す3つの条件を全て満たすことは多くの場合困難になるかと思います。ですので、自筆証書遺言を他人の手助けを受けて“書く”ことは極力さけるべきです。

他人の「添え手」による補助を受けてされた自筆証書遺言は原則無効。
例外的に、裁判例が示す3つの要件を満たした場合にのみ有効。

 

高齢者などで自書が難しい方の遺言書作成

そもそも、高齢者などで自書が難しい方の遺言書作成にあたっては、公正証書遺言の作成を検討すべきでしょう。公正証書遺言の場合には、公証人に遺言の内容を伝え、書いてもらうことができるからです。詳しくは『第82回相続コラム どうする?「字が書けない」「歩けない」場合の遺言』をご参照ください。

当事務所では遺言作成に関する相談を幅広く承っております。お気軽にお問い合わせください。