第290回相続コラム 遺言書が複数見つかった場合、それぞれの遺言書はどうなるのか

相続コラム

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第290回相続コラム 遺言書が複数見つかった場合、それぞれの遺言書はどうなるのか

第290回相続コラム 遺言書が複数見つかった場合、それぞれの遺言書はどうなるのか

遺言書は、残されたご家族同士の無用な争いを未然に防ぎ、また、相続手続きの負担を大幅に軽減することのできる非常に優れたツールではありますが、誤った使い方、不適切な遺言書をのこしてしまうと、かえって相続人を混乱させる場合もあります。今回のコラムでは、遺言書が複数見つかった場合、それぞれの遺言書はどうなるのか解説したいと思います。

 

遺言書は複数作成することも可能

意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、法律上、遺言書は1通しか作成してはならないというルールはありません。つまり、遺言書を作成する際に守るべき要件さえ満たしていれば、遺言書は何通作成しても、法律上、特に問題はないのです。

例えば、1通目の遺言書で、「自宅および敷地の所有権は妻に相続させる」旨の記載があり、2通目の遺言書で、「預金及び有価証券は長男に相続させる」旨の記載があった場合、両遺言書とも、遺言書として必要な法律上の要件を満たしていれば、両遺言書とも有効となり、故人が所有していた自宅および敷地の所有権は妻に、預金及び有価証券は長男に相続されることになります。

 

内容が抵触する複数の遺言書

遺言書が複数あったとしても、原則として、法律上の要件を満たすのであれば、どの遺言書も法律上有効となりますが、それぞれの遺言書の内容が抵触(矛盾)する場合には扱いが異なります。

例えば、1通目の遺言書で「有価証券は次男に、預金は長男に相続させる」旨の記載があり、2通目の遺言書で「自宅不動産は妻に、預金は長女に相続させる」旨の記載があった場合、預金を誰に相続させるかについて両遺言書間で矛盾が生じています。

遺言書の内容が抵触する場合には、最新の遺言書が優先することになり、最新の遺言書と抵触する前の遺言書の内容は、遺言が撤回されたものとみなされ、無効となります。

上記の例で言うと、2通目の遺言書が最新の遺言書であった場合、それと抵触する1通目の遺言書の内容は撤回されたものとみなされ、無効となりますので、預金は長女が相続することになります。なお、有価証券や自宅不動産の扱いについては、両遺言書間で特に抵触はありませんので、その部分については、有効のままとなります。

 

遺言書の先後

日付の先後で決める

遺言書を作成する際には、日付の記載が要求されますので、基本的に、全ての遺言書には日付の記載があります。ですので、遺言書の先後は、日付の先後を確認することで、どの遺言書が最新のものであるか、判断することができます。

なお、遺言の形式は遺言の優劣には関係がありません。仮に、自筆証書遺言と公正証書遺言がのこされていた場合、公正証書遺言の方が、厳格な様式が求められるため、公正証書遺言が自筆証書遺言に優先するようにも思えますが、法律上、その優劣はあくまで日付の先後で決まります。

 

日付が同じ場合

内容の抵触する複数の遺言書が同じ日付で作成されている場合には、遺言書の内容およびその他一切の事情を考慮し、遺言書の先後を決定します。

例えば、遺言書の日付が同一であったとしても、一方の遺言書に「前の遺言書の内容を撤回し、○○は△△に相続させる」などの記載があった場合に、その遺言書を最新のものと判断し、同記載部分を優先させるといったイメージです。

 

どうしても先後が不明な場合

複数の遺言書の作成日付が同一で、 遺言書の内容およびその他一切の事情を考慮しても、先後関係がどうしてもわからないという場合、それぞれの遺言書の効力をどう考えるのかについては、諸説ありますが、一般的には、内容が抵触する部分についてはどの遺言も無効になると考えられています。

 

まとめ

■遺言書は複数作成することも可能
■遺言書の内容が抵触する場合には最新のものが優先
■遺言書の先後は、遺言書の作成日付で判断
■日付が同一の場合には、 遺言書の内容およびその他一切の事情を考慮して判断
■どうしても先後が不明の場合には、抵触する内容の遺言は全て無効
■無効となった内容については、遺言がないものとして、遺産分割協議の対象

 

おわりに

今回のコラムでは、遺言書が複数見つかった場合、それぞれの遺言書はどうなるのかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。万が一、遺言書が複数見つかった場合には、本コラムを参考に、冷静にご対応頂ければと思います。また、遺言書を作成する方は、相続人の方が困らないように、古い遺言書は破棄し、最新の遺言書のみをのこしておくのが望ましいと言えます。

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