第216回相続コラム 遺言の種類について特別方式も含めて解説

相続コラム

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第216回相続コラム 遺言の種類について特別方式も含めて解説

第216回相続コラム 遺言の種類について特別方式も含めて解説

遺言が有効に成立するためには、法律に定められた方式に従って作成する必要がありますが、その方式には、いくつか種類があります。代表的な遺言として、「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」などがありますが、その他にも「秘密証書遺言」や、特別方式の遺言というものもあります。今回のコラムでは、特別方式の遺言も含めて、遺言の種類について解説したいと思います。

 

普通方式遺言と特別方式遺言

遺言は「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の大きく2つに分けることができます。

通常時に作成される普通の遺言を「普通方式遺言」といいます。「遺言」と聞いて、一般的にイメージされる「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」はすべて普通方式遺言です。「秘密証書遺言」も、内容は秘密という特殊性がありますが、通常時に作成される遺言書であり、普通方式遺言となります。

それに対して、特別方式遺言は、遺言者に命の危機が迫っている場合や遺言者が一般社会と隔絶した環境にある場合など、通常の遺言書を作成する余裕のない状況に限って認められる遺言のことをいいます。つまり、特別状況下では、要件が緩和された遺言の作成が認められ、それが「特別方式遺言」となります。

 

普通方式遺言は3種類

普通方式遺言には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類の遺言があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、文字通り遺言者が自筆で遺言書を作成する方式であり、紙とペンとハンコがあれば作成可能なため、最も利用しやすい遺言の方式といえます。

遺言者が、遺言書の全文・日付・氏名を自筆で記載し、押印することで、その遺言書は遺言としての効力が認められることになります。

自筆証書遺言について詳しくは
第4回相続コラム いまさら聞けない遺言の基本1」をご覧ください。

 

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことをいいます。具体的には、2人の証人が立ち会いの下、公証人が遺言者から遺言内容を聴取し、遺言書を作成します。

公正証書遺言は、法務省より任命された公証人が作成する公文書になるため非常に強い法的効力があるのが特長です。また、作成された遺言書は公証役場で保管されるため、紛失したり、改ざんされる危険性がありません。

公正証書遺言について詳しくは
第6回相続コラム いまさら聞けない遺言の基本3」をご覧ください。

 

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、その名とおり遺言の内容を秘密にできる遺言です。

自筆証書遺言なども、遺言の存在自体をご家族に伏せておくと存在が知られていない以上、内容も当然秘密になります。ただ、存在が知られていないと、実際に相続が発生した際に遺言があるのかないのか不明になり、場合によっては遺言が執行されない可能性もあります。秘密証書遺言は、存在は明らかにしつつもその内容を秘密にする遺言です。秘密証書遺言を作成した際には、その遺言に封をし、公証役場に行き公証人に遺言の存在を公証してもらうことになります。

自筆証書遺言と異なり、署名と押印だけ自分で行えば、後の内容はPCでの作成・他の人の代筆が認められているのが特長です。

秘密証書遺言は、内容が秘密であるという特性上、仮に内容に不備があったとしても、その不備を指摘してもらうことができず、無効となってしまう危険性が高くなります。また、秘密証書遺言の作成後は、ご自身でそれを保管・管理する必要があるため、紛失したり・毀損するリスクもあり、利用される際には細心の注意が必要となります。

秘密証書遺言について詳しくは
第5回相続コラム いまさら聞けない遺言の基本2」をご覧ください。

 

特別方式遺言

特別方式遺言には、「危急時遺言」と「隔絶地遺言」の2種類があります。どちらの遺言も、あくまで特別な状況下にあることにより認められる特殊な遺言なため、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、無効化されます。

 

危急時遺言

危急時遺言とは、病気やけが、遭難などの特殊事情によって命の危険が迫っている場合に利用できる遺言のことをいいます。危急時遺言は、遺言者が置かれた状況によって、さらに「一般危急時遺言」と「難船危急時遺言」の2種類に分けられます。

一般危急時遺言

病気やけが、その他の有事によって遺言者に命の危険が迫っている状況で行う遺言の方式が、一般危急時遺言です。

3人以上の証人のもとで、遺言者が口頭で遺言内容を説明しそれを文章に書き起こすことで遺言としての効力が得られます。実際に文章を書き起こすのは、証人でも構いません。遺言書の内容は他の証人や遺言者本人に伝えられ、間違いがなければすべての証人が署名押印し、遺言書が完成します。

注意点として、一般危急時遺言が作成された場合、20日以内に家庭裁判所で確認手続きを受けなければなりません。期限内に手続きをしないと無効となってしまうので注意が必要です。

難船危急時遺言

船や飛行機に乗っていて、遭難などに遭い、命の危険が迫っている状況で行う遺言の方式が、難船危急時遺言です。

2人以上の証人のもとで、遺言者が口頭で遺言内容を説明し、証人が遺言の趣旨を筆記して、署名・押印します。一般危急時遺言とは異なり、20日以内という期間制限はありませんが、遅滞なく家庭裁判所の確認手続きを受ける必要があります。

 

隔絶地遺言

隔絶地遺言とは、遺言者が一般社会と隔絶され、普通方式による遺言ができない場合に認められる遺言の方式です。隔絶地遺言には、「一般隔絶地遺言」と「船舶隔絶地遺言」があります。

一般隔絶地遺言

一般隔絶地遺言は、伝染病などで遠隔地に隔離され、通常の遺言方式を利用するのが難しい場合に認められる遺言方式です。作成時には、警察官1名と証人1名の立会が必要となります。また危急時遺言とは異なり、遺言書は遺言者本人が作成しなければなりません。代筆や口頭で伝えて書き取ってもらう方法は利用できないので、注意が必要です。危急時遺言とは異なり、遺言者に命の危険が迫っているわけではないからです。遺言書作成時には、遺言者、警察官及び証人は、各自署名し、押印する必要があります。

船舶隔絶地遺言

船の中で遺言書を作成したい状況で利用できる遺言形式です。船長または乗務員1人と証人2人以上のもとで、遺言者本人が遺言書を作成した場合のみ遺言書としての効力が認められます(船長または乗務員と証人の署名・押印が必要)。難船危急時遺言とは異なり、命の危険が迫っている必要はありません。

おわりに

今回のコラムでは、特別方式の遺言も含めて、遺言の種類について解説しましたが、いかがだったでしょうか。特別方式の遺言は、特殊な状況下での利用が想定された遺言なため利用されることは稀ですが、災害等に巻き込まれた際に知っておくと便利です。天災や病気等はいつご自身に降りかかるかは予測できないため、いざという時のために、普通方式の遺言を作成しておくことが最も大切となります。

当事務所では、長年相続問題に取り組んでおり、遺言を含む相続に関する相談を広く受け付けております。相談は初回無料となっておりますので、遺言や相続についてお悩みのある方は、お気軽にご相談ください。