第57回相続コラム 数次相続があった場合の登録免許税を安くする方法
- 2020.02.07
- 知って得する相続対策
- 数次相続, 登録免許税
今回は当相談所に実際に相談のあったケースをもとに、数次相続があった場合の手続きについて、登録免許税をいかに安くするかという観点から解説したいと思います。
事例
20年前に祖父が亡くなり、父が祖父から自宅の土地建物を相続しました。しかし、父は祖父からの相続登記をしないまま亡くなってしまいました。私は父から自宅を相続しましたが、私は「祖父→父」と「父→私」の2回分相続登記をしなければならず、登録免許税も2回分負担しなければならないのでしょうか?
中間の相続人が1人の場合
このようなケースで「祖父→父」の相続を一次相続、「父→ご本人」の相続を二次相続と呼びます。被相続人の遺産相続が開始したあと、「遺産分割協議」や「相続登記」を行わないうちに相続人の1人が死亡してしまい、次の遺産相続が開始されてしまうことを数次相続と言います。不動産の相続登記をしないままでいると、その後も相続が発生し相続人が次々と増えていくリスクがあることについては「第24回相続コラム どんどん増える!?意外とこわい数次相続とは?」をご参照ください。
数次相続については、本ケースのように中間の相続で相続人1人が単独で相続する場合、登記名義人(亡祖父)から最終の相続人(ご本人)が直接相続登記をすることが可能です。登録免許税を2回分支払う必要はありません。
中間の相続人が複数の場合
これに対して、例えば中間の相続で複数の相続人が共有して相続する場合は、最終の相続人が直接相続登記をすることはできません。祖父から父と父の弟が持分2分の1ずつ相続し、その後父の持分2分の1を本人が相続した場合などがこれにあたります。この場合は「祖父→父・父の弟」の登記と「父→ご本人」の登記を順番に申請しなければならず、登録免許税を2回支払う必要があります。
もっとも、平成30年度の税制改正により設けられた次の免税措置が現在も続いています。
「個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない」(租税特別措置法第84条の2の3第1項)。
つまり、最終の相続人に直接相続登記をすることができない数次相続であっても、来年3月31日までは中間の土地の相続について登録免許税は課されない、ということになります。建物には免税措置がない点に注意は必要ですが、例えば評価額5000万円の土地に免税措置を受けることができれば、登録免許税0.4%にあたる20万円を負担しなくて済むということになります。
相続登記がされないまま長期間経過してしまった不動産がある方は、さらに相続が発生しないうちに、また上記の免税措置が続いているうちに、なるべく早く司法書士に相談することをお勧めします。当相談所でも、数次相続を含め多数の相続案件を取り扱っています。お気軽にご相談ください。
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