第143回相続コラム 遺言を書く際に気をつけるべき遺留分 遺言と遺留分の関係について
相続対策の要となる遺言書。遺言を書く際には、遺留分を意識した内容にする必要があり、これを無視した遺言書を作成してしまうと、かえって相続人間の争いを誘発させる危険性があります。今回は、遺言を書く際に気をつけるべき遺留分と遺言の関係について解説したいと思います。
遺言と遺留分の関係
遺言は、ご自身の最終意思として自由に内容を決めることができるのが原則です。ですので、遺留分を一切考慮していない遺言であっても法律上有効な遺言となります。
しかし、遺産は、ある意味では残されたご家族の生活保障という側面があるので、一定の相続人には、遺留分という最低限の遺産の取り分を法は認めています。
この最低限保障された遺産の取り分である遺留分を貰えなくなった相続人は、遺留分を侵害している者、例えば全財産を譲り受けた他の相続人などに、遺留分を取り戻すための「遺留分侵害額請求」という形で、遺産の分前を要求することができます。
・遺言の内容は自由
・遺留分を侵害する内容の遺言も遺言としては有効
・遺留分を無視した遺言を作成すると、後に相続人間で遺留分侵害額請求という形で争いが発生してしまう危険性がある。
遺留分について詳しくは「第30回相続コラム しっかり押さえたい遺留分の基本」をご覧ください。
遺留分を侵害する内容の遺言はなるべく避ける
遺留分を侵害する内容の遺言を作成すると、残されたご家族の間で無用な争いを生む危険性があるため、特別な事情がないのであれば、遺留分を侵害する内容の遺言は書かないというのが遺言書作成の基本となります。
例えば、相続人として、長男と長女がいる場合に、長男に全財産を相続させようと考えて、長男に全財産を相続させる内容の遺言を作成すると、長女が長男に対して、遺留分を取り戻すために、遺留分侵害額の請求をする可能性があります。仮に相続財産のほとんどが長男が引き継いだ実家であり、遺留分を支払うだけの原資が長男になかった場合には、長女が長男に対して遺留分を支払うために住んでいる実家の売却を迫るような格好になり、争いが深刻化するケースも多く見られます。
そこで、特に長女に財産を譲らない理由がないのならば、最初から遺言の内容として、長女には遺留分に相当する額の財産を譲り、それ以外の全ての財産を長男に相続させるようにするのです。これにより多くの財産を長男に残しつつ、残された相続人同士の争いも回避できます。
ただ、どうしても長男に全財産を残したい理由がある場合、例えば、相続財産のほとんどが家業に関わる財産であり、その家業を長男が継いでいるというような場合には、何らかの対策を検討しなければならなくなります。遺留分対策として、生前贈与などを活用して遺産の総額を減らしたり(遺留分も減る)、遺留分侵害額請求を受けそうな相続人を死亡保険金受取人に指定しておくなどの方法があります。
遺言と遺留分で悩んだらご相談ください
当事務所は、世田谷で30年以上相続案件に携わってきた実績のある事務所です。相続人間の無用の争いを避けつつ遺言を作成するにはどうしたらいいのか、遺留分対策をしつつ遺言を作成したいなど、相続や遺言でお悩み・お困りの方は当事務所までご相談ください。皆様にご納得頂ける遺言書作成を全力でサポートさせて頂きます。また、相談は初回無料となってますので、お気軽にご相談下さい。
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