第220回相続コラム 孫への教育資金の生前贈与と税金(教育資金の一括贈与の特例)について
- 2023.04.24
- 知って得する相続対策
- 孫, 教育資金, 教育資金の一括贈与の特例, 生前贈与
前回のコラムでは、孫に遺産を相続させる方法について解説しましたが、遺産として財産を譲り渡す以外にも、生前贈与や生命保険などを活用して、財産を譲る方法もあります。生前贈与を行う際には、贈与税は一般的に高額となるため、税金対策も併せて考える必要があります。今回のコラムでは、孫への教育資金の生前贈与と税金(教育資金の一括贈与の特例)との関係について解説したいと思います。
祖父母から孫への教育資金の贈与と税金
祖父母から孫へ教育資金を贈与した場合、そもそも税金はかかるのでしょうか??
通常、個人間で金銭の授受や財産の贈与が行われた場合には、その金額に応じて贈与税が課せられるのが原則です。
しかし、親や祖父母は、孫に対して扶養義務を負っているため、通常必要と認められる生活費や教育費を負担したとしても、贈与税は課されません。「扶養する義務のある者が、その義務を果たしたら課税される」なんてことにはならないということです。
ですので、例えば、孫の学費や、教材費、通学のための定期代、修学旅行費などを、祖父母が、その都度負担していたとしても、常識的な範囲内の支出であれば贈与税はかかりません。
教育資金の一括贈与の特例
上で解説したとおり、祖父母が孫の教育費を負担したとしても、扶養義務の範囲内であれば、そもそも贈与税は課せられません。
では、『教育資金の一括贈与の特例』は、なんのためにあるのか、どんな特例なのでしょうか?
祖父母から孫への教育資金の贈与は、扶養義務の範囲内であれば、贈与税は課せられないのですが、教育資金としての贈与と認められるためには、その贈与されたお金が、その都度直接、教育費に充てられなければならないというルールがあります。ポイントは『都度』という点です。
そのため、まだ必要ではないけど、将来必要となるだろうから、前もってお金を渡しておくということはできないということです。渡した場合には、通常の贈与とみなされ、贈与税が課せられることになります。
例えば、生まれたばかりの孫に、将来の大学入学のための費用として、前もってお金を渡したような場合には、通常の贈与として、贈与税がかかります。お孫さんが、見事大学に入学されて、入学金や授業料が必要となったタイミングに、その学費を援助した場合には、必要な教育費の負担として、贈与税はかからないということになります。
必要なタイミングに、必要な額を贈与するのではなく、前もって教育資金をまとめて贈与する場合には、通常の贈与税が課せられてしまうのですが、一定の手続きを踏み、条件を満たすことで、最大1,500万円までの贈与を非課税にできるのが『教育資金の一括贈与の特例』になります。
なお、この『教育資金の一括贈与の特例』は、令和5年3月31日までの贈与に利用できる時限的な措置でしたが、令和5年度税制改正大綱によると、適用期限が3年延長される見通しとなりました。
■都度、必要な教育費を負担する場合には、そもそも非課税
■前もって一括で教育費を渡すと、実際に教育費に充当されていないため、通常の贈与として、贈与税が課せられる
■『教育資金の一括贈与の特例』を利用すると、教育費を前もって一括で非課税(最大1,500万円)で贈与できる
参考:国税庁タックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
参考:令和5年度税制改正の大綱
https://www.soumu.go.jp/main_content/000853546.pdf
おわりに
今回のコラムでは、孫への生前贈与と税金(教育資金の一括贈与の特例)との関係について解説しましたが、いかがだったでしょうか。孫への教育資金の贈与=教育資金の一括贈与と連想される方も少なくありませんが、都度教育費を負担する分には、特例を利用しなくても、非課税で贈与をすることが可能です。『教育資金の一括贈与』を利用する場合には、一定の手続きをし、いくかの条件を満たす必要がありますが、その具体的条件等は、また別のコラムで解説したいと思います。
当事務所は、30年以上、相続問題に携わってきており、また、相続税や贈与税に強い税理士とも提携しております。相続問題に関する無料相談を実施しておりますので、相続に関することでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。信頼できる税理士をご紹介することも可能です。
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