第306回相続コラム 相談事例から解説する相続登記の申請とセットで依頼したい法定相続情報証明制度の利用申請

相続コラム

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第306回相続コラム 相談事例から解説する相続登記の申請とセットで依頼したい法定相続情報証明制度の利用申請

第306回相続コラム 相談事例から解説する相続登記の申請とセットで依頼したい法定相続情報証明制度の利用申請

相続が発生すると、様々な手続きが必要となり、その手続きの多くは、相続人が誰であるかを特定するために戸籍謄本等の提出が必要となります。必要な手続き毎に、その都度、戸籍謄本等の束を用意するのは大変手間がかかりますし、また、提出した戸籍謄本等の束を還付してもらい、持ち回りで手続きを進めると、多大な時間を要することになってしまいます。

今回のコラムでは、実際に当事務所でお受けした相談事例を元に、相続登記の申請を司法書士に依頼する際に、併せて法定相続情報証明制度の利用申請を依頼することのメリットを解説したいと思います。

なお、相談事例の内容については、プライバシーに配慮し、わかりやすく解説するため、内容を一部改変しています。

相談事例概要

相談者Xさんは、世田谷区に住む60代の女性の方です。数ヶ月前に夫が亡くなり、夫がのこした遺産ついて相続手続きを進めたいと考え、当事務所に相談に来られました。

Xさんの夫がのこした主な遺産として、自宅やその敷地の他に、預貯金の口座が複数あり、その数は10口にもなります。

Xさんの希望として、自宅や敷地の相続手続きは、相続登記の義務化のこともあり、専門家にお任せしたいが、預貯金の口座の相続手続きはご自身で行いたいと考えていました。

 

相談事例の課題

自宅や敷地の相続手続きである相続登記は専門の司法書士にお任せ頂けるということでしたので、その手続きを進める際に相談者Xさんに手間がかかることはありません。しかし、10口もある口座の相続手続きをご自身で行うとなると、必要書類である戸籍謄本等を収集するだけでも、膨大な手間と時間がかかってしまいます。相談者Xさんがご自身で相続手続きを進める際の負担をいかに軽減するか、というのが今回の相談事例の課題となります。

当事務所の解決策

当事務所の解決策として、登記のプロ、司法書士として相続登記の申請を代行するとともに、「法定相続情報証明制度」の利用申請を行い、「法定相続情報一覧図」を発行可能にいたしました。そして、発行可能となった「法定相続情報一覧図」の交付申請を行い、口座の相続手続き用に10通の「法定相続情報一覧図」を取得しました。

この「法定相続情報一覧図」をお渡しすることで、相談者Xさんは、大量の戸籍謄本等の束を用意する必要がなくなり、ご自身で口座の相続手続きを進める際の手間と時間を大幅に短縮することが可能となりました。

 

そもそも法定相続情報証明制度とは何か

法定相続情報証明制度とは、大量の戸籍を簡素化した相関関係図にして証明書として発行できるようにした制度です。

法定相続情報証明制度では、相続人を特定できる戸籍謄本等と相続関係を示す一覧図を法務局に提出することで、登記官の認証文が付された一覧図の写し(法定相続情報一覧図)の交付を受けられるようになります。法務局によって交付された法定相続情報一覧図によって、法定相続人が誰であるかを証明することが可能となります。

簡単に言うと、法定相続情報証明制度は、何通にもおよぶ戸籍謄本等の束の代わりになる証明書を発行できるようにした制度ということです。

相続の手続きを進める際には、相続人は誰であるのか正確に特定するために、被相続人の戸籍を出生まで遡って取得する必要があるため、少なくない数の戸籍を収集する必要があります。また、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースでは、被相続人の戸籍だけでなく、被相続人の両親の戸籍まで遡って取得する必要があり、膨大な量の戸籍を集めることになります。

大量の戸籍謄本等の束を、その提出が要求される手続き毎に収集するとなると、かかる手間も時間も膨大となってしまい、相続人の大きな負担となっていました。

そのような手続き的負担を軽減するために創設されたのが法定相続情報証明制度というわけです。法定相続情報証明制度を利用すると、法定相続情報一覧図という、いわば“戸籍謄本等の束の代わりになる公的な証明書”の交付を受けられるようになるため、都度、戸籍謄本の束を収集するという作業が不要となります。

■法定相続情報証明制度を利用し、一度登録をすると、 法定相続情報一覧図の交付を受けられるようになります
■法務局で交付を受けた法定相続情報一覧図は“戸籍謄本等の束”に代わる、相続人は誰であるかの証明書として利用することができます。

 

法定相続情報証明制度のメリット

法定相続情報証明制度のメリットは、戸籍謄本等を収集する手間を大幅に省くことができるということです。

ただし、法定相続情報証明制度の利用登録の際には、一度、戸籍謄本等を収集する必要がありますので、「相続手続きを一箇所でしか行わない」というケースでは、そのメリットは薄くなります。戸籍謄本等の提出が必要な相続手続きが多くなればなるほど、法定相続情報証明制度を利用するメリットは大きくなります

相続に関する手続きには、相続登記の申請や預貯金の解約の手続きだけでなく、他にも、相続税の申告、公的年金の手続き、有価証券の手続、自動車の名義変更など、多岐にわたります。

今回の相談事例のように預貯金の口座だけでも、複数存在するケースもありますので、そのような場合には、法定相続情報証明制度を利用することで、手続き的負担を大きく軽減することが可能となります。

 

相続登記とセットで依頼するメリット

相続登記を申請する際には、相続人が誰であるのかを正確に特定するために、戸籍謄本等の提出が必須となりますので、司法書士に相続登記の申請を依頼すると、その申請のために戸籍謄本等を収集してくれます。

相続登記の申請と法定相続情報証明制度の利用申請をセットで依頼すると、戸籍収集の作業を一度に済ますことができるため、支払う報酬を比較的安価に抑えることが可能となります。

■相続登記の申請には戸籍謄本等の収集が必要
■法定相続情報証明制度の利用申請にも戸籍謄本等の収集が必要
■両方セットで司法書士に依頼すると、支払う報酬を抑えることが可能

 

おわりに

今回のコラムでは、実際に当事務所でお受けした相談事例を元に、相続登記の申請を司法書士に依頼する際に、併せて法定相続情報証明制度の利用申請を依頼することのメリットを解説しましたが、いかがだったでしょうか。

相続登記の申請には、高度な専門的知識が必要となるため、司法書士に申請を依頼するケースが多くを占めますが、「他の自分でできそうな手続きは自分でやりたい」という方も少なくありません。そのようなケースでは、相続登記の申請とセットで法定相続情報証明制度の利用申請も依頼すると、ご自身で行うその他の相続手続きの負担が軽減されるため、オススメとなります。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続登記ついてお困りの方はもちろん、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。