第303回相続コラム 相談事例から解説する土地を分割(分筆)して相続する方法

相続コラム

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第303回相続コラム 相談事例から解説する土地を分割(分筆)して相続する方法

第303回相続コラム 相談事例から解説する土地を分割(分筆)して相続する方法

ひとつの土地を複数の相続人で相続した場合に、よくある分配方法として、その土地を売却し、売却代金を相続人間で分けるという方法があります。また、特定の相続人がその土地を相続し、他の相続人には相続分に応じた代償金を支払うという方法もあります。

では、「相続した土地を相続人毎に分割(分筆)して相続したい」という場合には、どのような手続きが必要となるのでしょうか。

今回のコラムでは、実際に当事務所でお受けした相談事例を元に、土地を分割(分筆)して相続する方法について解説したいと思います。

なお、相談事例の内容については、プライバシーに配慮し、わかりやすく解説するため、内容を一部改変しています。

 

相談事例概要

相談者AさんとBさんは姉妹で、それぞれ世田谷区に住宅を所有しています。Aさんの住宅もBさんの住宅も、お二人の父Xさんが所有するひとつ(一筆)の土地の上に建てられたものです。

父Xさんが亡くなり、AさんとBさんが相続人となりましたが、Xさんが所有していた土地を分割(分筆)し、それぞれの住宅の底地を相続したいと考えています。

底地を分割して相続するにはどのような手続きが必要となるのか、当事務所に相談に来られた事例になります。

土地を数える際の単位は、1筆、2筆というように「筆」となります。一筆の土地を複数の土地に分割することを分筆と言います。逆に、複数の筆の土地をひとつにまとめることを合筆といいます。

 

分筆登記後に相続登記する方法(推奨)

今回の相談事例のように、「相続した土地を相続人毎に分割(分筆)して相続したい」という場合の手続きとして、分筆登記後に相続登記を申請するという方法があります。具体的な手続きの流れは、以下のようになります。

①分筆登記を申請する

相続したXさん名義の土地は一筆の土地ですので、分筆登記という手続きによって2つの土地に分けます。

「土地を2つに分ける」とは言っても、物理的に土地を2つに分けることはできません。

ですので、土地を分けるためには、その土地を測量し、図面等を作成し、それらの資料を基に、土地をどのように分けるのか境界を確定し、法務局に「このように土地を分けますよ」と申請する必要があります。これが分筆登記という手続きになります。

法務局に分筆登記を申請し、それが受理されると、分筆された土地の情報が公の記録簿である登記簿に記録され、一筆だった土地が複数の土地として扱われることになります。

なお、分筆登記を申請するための測量や図面作成等には専門的知識・技術が必要になりますので、土地家屋調査士という国家資格を持つ専門家に依頼するのが一般的です。

 

②分筆された土地について遺産分割協議を行う

分筆登記により、一筆だった土地が二筆の土地となりましたので、それらの土地について遺産分割協議を行います。

具体的には、Aさんの住宅の底地となっている土地についてはAさんが相続、Bさんの住宅の底地となっている土地についてはBさんが相続する旨の遺産分割協議を行います。

相続人全員が合意し、遺産分割協議が成立すると、遺産の配分が確定しますので、遺産分割協議で決まった通りにそれぞれの土地の所有者が決まります。

つまり、Aさんの住宅の底地はAさんが所有者に、Bさんの住宅の底地はBさんが所有者になります。

 

③相続登記を申請する

遺産分割協議によって、Aさんの住宅の底地はAさんが所有者に、Bさんの住宅の底地はBさんが所有者になりましたが、各土地の名義はXさんのままとなっているので、不動産の名義変更を法務局に申請する必要があります。この相続した不動産の名義変更手続きを相続登記と言います。

相続登記を申請することによって、Aさんの住宅はAさん名義の土地の上に、Bさんの住宅はBさん名義の土地の上に建っている状態にすることができます。

なお、2024年4月1日から、相続登記の申請は義務とされています。申請を怠ると罰則の適用もありますので、注意が必要となります。

 

相続登記後に分筆登記する方法(非推奨)

「相続した土地を相続人毎に分割(分筆)して相続したい」という場合の手続きとして、分筆登記後に相続登記する方法の他に、相続登記を行った後に分筆登記をするという方法があります。

ただし、この方法を採用すると、登記を申請する際の登録免許税が余分に必要となり、また、手続きも複雑になるため、おすすめはしません。

具体的な手続きの流れは、以下のようになります。

 

①相続登記を申請する

被相続人が亡くなると、法律的には、その瞬間から遺産は相続人の共有財産となりますので、Xさんの土地も、相続によって、AさんとBさんの共有財産となります。

厳密に法律を適用すると、相続の瞬間に土地の所有者が変わっているため、その名義変更手続きである相続登記も申請することが可能です。

つまり、法律上の所有者と名義を一致させるために、Xさん名義の土地を、AさんとBさんの共有名義に変更する相続登記を申請します。

 

②共有名義の土地を分筆する

今回の事例では、もともとひとつであった底地を分筆し、AさんとBさんでそれぞれの住宅の底地を取得したいと考えていますので、分筆登記を申請します。

分筆登記によって、一筆であった土地が、複数の土地として扱われます。

 

③各土地を単独所有とするための遺産分割協議を行う

AさんとBさんの共有状態にある土地を分筆すると、分筆された各土地も同じくAさんとBさんの共有となります。各底地の共有状態を解消するために、遺産分割協議を行います。

具体的には、Aさんの住宅の底地となっている土地についてはAさんが相続、Bさんの住宅の底地となっている土地についてはBさんが相続する旨の遺産分割協議を行います。

この遺産分割協議によって、Aさんの住宅の底地はAさんの単独所有に、Bさんの住宅の底地はBさんの単独所有にすることができます。

 

④遺産分割による持分移転登記を申請する

遺産分割協議によって、各底地の持ち分が変更になったので、その持ち分の変更を登記に反映させるために、持分移転登記を申請する必要があります。

各底地の持ち分を変更することにより、各底地の名義が単独所有に変わり、Aさんの住宅はAさん名義の土地の上に、Bさんの住宅はBさん名義の土地の上に建っている状態になります。

なお、遺産分割協議によって持ち分が変更になる場合に行う登記も、その申請は義務となります。

 

おわりに

今回のコラムでは、実際に当事務所でお受けした相談事例を元に、土地を分割(分筆)して相続する方法について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

故人名義の土地については、いったん相続人名義に変更した上で分筆する方が、法律の実体に即した正攻法と言えなくもないのですが、手続きが迂遠な上に、登記の申請回数も増えるため、登録免許税の負担も増えてしまいます。

そのため、登記実務上、申請者の負担を軽減するために、故人名義の土地を故人名義のまま分筆することも認められています。

ですので、「相続した土地を相続人毎に分割(分筆)して相続したい」という場合には、故人名義のまま分筆登記を行い、その後に相続登記する方法をおすすめします。

当事務所では、相続登記のプロである司法書士として、皆様に最適な相続登記をご提案いたします。また、分筆登記が絡む複雑なケースにおいても、土地家屋調査士と連携して必要なサービスをご提供いたします。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続登記ついてお困りの方はもちろん、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。