第310回相続コラム 不動産を相続した際の名義変更について基本から徹底解説
- 2025.06.04
- 相続と不動産

土地や家などの不動産を相続した場合、その名義変更はどのように進めたら良いのでしょうか。名義変更手続の方法や必要書類、名義を放置するリスク、2024年施行の義務化などについて詳しく解説します。初めて不動産を相続した方向けに、基本から分かりやすい内容で、注意点なども解説したいと思います。
相続した不動産の名義変更とは
相続によって不動産の所有者が変わる
相続が発生すると、亡くなった方(専門用語で被相続人と呼びます)の財産は、相続人に相続されます。
被相続人が所有していた家や土地などの不動産も相続人に相続されますので、相続人が不動産の新たな所有者となります。
所有者が相続によって変わったとしても、所有者が誰であるかの記録、つまり、不動産の名義が自動的に変更されるわけではないので、名義を変更するためには手続きが必要となります。
相続した不動産の名義
不動産の所有者が誰であるか、その名義は法務局の登記簿で記録され、管理されています。
不動産の名義を変更するということは、登記を変更することになりますので、不動産の名義を変更するためには、法務局に登記の申請を行う必要があります。
不動産を相続した際の名義変更のことを、専門用語で相続登記と言います。相続を原因として、登記の名義を変更(所有権を移転)するので、相続登記と呼ばれます。
■相続によって不動産の所有権が相続人に移転し、相続人が所有者となります。
■相続した不動産の名義を変更するためには、手続きが必要となります。
■相続で取得した不動産の名義変更を、専門用語で相続登記と言います。
相続発生後、不動産の名義変更はいつまでに行うべきか
相続登記の申請は義務
2024年4月1日に施行された改正法により、不動産を相続した際の名義変更、すなわち相続登記の申請は、義務とされました。
改正法施行前は、相続登記を申請するか否かは、相続人の自由意思に委ねられていたのですが、改正法施行により義務化されたため、必ず相続登記の申請をしなければなりません。申請を怠ると罰則の適用もあります。
相続登記の義務化によって、相続した不動産の名義を変更することは義務となっていますが、注意しなければならないのが、改正法施行前の相続についても、申請の義務があるということです。
つまり、2024年4月1日以前に発生した相続についても、名義を変更していない不動産がある場合には、申請を怠ると罰則の適用があるということです。
相続登記の申請期限について
相続登記の申請は「相続の開始を知って、かつ、所有権を取得したと知った日から3年以内」に行う必要があります。単独で相続した場合や法定相続分通りに相続した場合はもちろん、相続人が遺贈によって不動産を取得した場合にも、登記の申請が必要です。遺贈とは、遺言によって不動産を譲り受けることを言います。
上記期間内に登記を申請をしないと、 10万円以下の過料という罰則が適用されるおそれがあります。
遺産分割協議が長期に及ぶようなケースでは、「相続人申告登記」という簡便な手段で罰則の適用を回避できる制度が新設されましたので、その利用をオススメします。
相続人申告登記について詳しい解説は「第125回相続コラム 相続登記の義務化と新設された制度(相続人申告登記)」をご覧下さい。
■2024年4月1日より相続登記の申請は義務化されました。
■2024年4月1日以前の相続についても義務化の対象です。
■申請を怠ると罰則が適用されるおそれがあります。
■申請期限は「相続の開始を知って、かつ、所有権を取得したと知った日から3年以内」。
■期限内に申請が難しい場合には「相続人申告登記」を活用する。
相続した不動産の名義変更手続
申請方法
不動産の名義変更手続きは、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。法務局に登記申請書や必要書類を提出して行うのですが、直接法務局の窓口で提出する他、郵送やオンラインでの申請も可能です。
・法務局の窓口で申請
・郵送で申請
・オンラインで申請
必要書類
相続した不動産の名義変更手続き、相続登記の申請の際には、登記申請書だけでなく、被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、相続する不動産の固定資産評価証明書など、様々な書類の提出が必要となります。また、提出すべき書類は、遺産分割協議によって相続するケース、遺言によって相続するケースなど、『相続』のケースによって異なります。
例えば、法定相続分どおりに相続する場合には、下記のような書類が必要となります。
■登記申請書
■被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
■被相続人の住民票の除票(または戸籍の除附票)
■相続人全員の戸籍謄本
■相続人全員の住民票
■相続する不動産の固定資産評価証明書等
代表的な相続のケース毎に必要となる書類について、別のコラムで詳しく解説しておりますので、そちらを参照下さい。また、登記申請書の詳しい記載方法についても別コラムをご用意しております。
法定相続分どおりに相続するケースの必要書類
「第261回相続コラム 相続登記の必要書類-法定相続分どおりに相続する場合」
遺産分割協議によって相続するケースの必要書類
「第262回相続コラム 相続登記の必要書類-遺産分割協議によって相続する場合」
遺言書によって相続するケースの必要書類
「第263回相続コラム 相続登記の必要書類-遺言書によって相続する場合」
登記申請書の書き方
「第271回相続コラム 相続登記申請書の書き方を見本付きで解説」
申請に必要な費用
必要書類を取得するための費用
上で解説したとおり、相続登記を申請する際には、戸籍謄本、印鑑証明書、固定資産評価証明書などの様々な書類を提出する必要があります。それらの書類を取得するためには発行手数料等の費用が必要となります。
各種証明書の発行に必要な費用は、証明書の種類や発行する自治体によって異なりますが、1通発行するのに、数百円ほどの発行手数料が必要となります。
例えば、世田谷区の場合、戸籍謄本の発行は1通につき450円、除籍謄本の発行は1通につき750円の発行手数料がかかります。印鑑証明書の発行は1通につき300円の発行手数料が必要となります。
登録免許税
相続登記を申請する際には、登録免許税と呼ばれる税金を国に納める必要があります。
登録免許税額は土地や建物の評価額(固定資産税評価額)に法律で定められた税率をかけて計算されます。相続登記の場合、不動産の固定資産評価額の1000分の4(0.4%)の登録免許税が課税されます。
例えば、5,000万円の土地の相続登記を申請する際には、5,000万円×0.4%=20万円の登録免許税が必要になります。
登録免許税の詳しい計算方法については「第272回相続コラム 相続登記申請時に必要となる登録免許税の計算方法について詳しく解説」をご覧下さい。
登録免許税の納付方法について詳しい解説は「第273回相続コラム 相続登記申請時に必要となる登録免許税の3つの納付方法」をご覧下さい。
相続した不動産の名義変更を司法書士へ依頼
相続した不動産の名義変更は、相続人自らが申請することも可能ですが、登記の専門家である司法書士に依頼することができます。プロに一括して書類収集から手続きまで依頼できますので、時間と手間を省き、ミスによるリスクを大幅に減らすことができます。
司法書士に依頼するメリット・デメリット
不動産登記は、不動産という価値の高い重要な財産に関する権利関係を公示するものですので、その変更手続きについては、法律上、厳格なルールが定められています。
そのため、申請書の記載方法も複雑であり、戸籍謄本などの収集すべき書類も相当な量となることがあります。また、相続に際して遺産分割協議を行った場合には、その内容をまとめた遺産分割協議書の提出が必要となる等、専門的な知識なしに手続きを進めることは、難しいケースもあります。
申請書に不備があったり、集めた書類が不十分であった場合には、申請が受理されないため、時間をかけて何度も不備を直し、自力で申請するくらいなら、最初から、専門の司法書士に依頼した方が、時間も手間も省けて経済的というケースも少なくありません。
特に、高齢の方や平日昼間に時間を取ることが難しい方は、専門家に一括して依頼することで、時間と手間を省き、面倒事のストレスから解放されるため、大きなメリットとなります。
登記の専門家である司法書士が申請を行うので、ミスや漏れがなく、安心して任せることができます。
他方で、専門家に手続きを依頼する以上、その報酬が必要となります。
司法書士に支払う報酬については、依頼する事務所によって料金体系は異なりますが、一般的に、6万円~15万円程度の報酬が必要となります。
司法書士に支払う報酬は、相続人の数や申請する不動産の数、作成する書面の数等によって変わってくることが多いため、司法書士に依頼する際には、報酬内容の見積をとり、不明な点はしっかりと確認することが大切です。
■時間と手間、ストレスを大幅にカットできる。
■専門家が手続きを行うので安心・確実。
■複雑な案件にも対応可能。
■ただし、司法書士報酬が必要となる。
おわりに
今回のコラムでは、不動産を相続した際の名義変更について基本から詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。不動産の名義変更手続きは、初めて経験する方には分かりにくく、トラブルや不安も多い分野です。「難しい」と感じた時は、一人で悩まず法務局の相談窓口や司法書士への相談を利用することをおすすめします。大切な不動産とご家族の将来を守るためにも、期限内に名義変更・相続登記を申請することが大切です。
当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。
-
前の記事
第309回相続コラム 相談事例から解説する「相続登記を自分でやった人が途中で挫折する理由」 2025.05.21
-
次の記事
第311回相続コラム 相談事例から解説する疎遠なご家族が亡くなった際の遺産整理 2025.06.18