第308回相続コラム 相続した土地の評価額を調べる方法

土地を相続した場合、その土地の価額はいくらなのか、評価額を調査する必要のある場面に遭遇することが多々あります。例えば、相続税を申告する場合や相続した土地の名義を変更する場合などです。今回のコラムでは、相続した土地の評価額を調べる方法を解説したいと思います。
相続した土地の評価額と評価する目的
相続した土地の評価額は、用いる評価方法によって異なります。そして、用いるべき評価方法は、土地を評価する目的によって異なります。
ですので、まずは、何のために土地を評価するのか、目的を明確にし、その目的に適した評価方法を用いることが大切となります。
例えば、相続した土地の名義を変更する場合、いわゆる相続登記を申請することになりますが、その申請の際には登録免許税と呼ばれる税金を納付する必要があります。登録免許税は、登記を申請する不動産の価額に一定の割合を乗じて計算されるため、税金を納める立場としては、なるべく不動産を安く評価したいと思うのが心情です。
しかし、自身の判断で勝手な評価方法を用いて不動産を評価することは認められていませんので、法令で定められた評価方法によって価額を算出する必要があるということです。
■相続した土地の評価額は、用いる評価方法によって異なる。
■用いるべき評価方法は、評価する目的によって異なる。
■目的に適した評価方法を用いる必要がある。
以下、目的別に相続した土地の評価方法やその調べ方を解説します。
相続登記の申請
固定資産税評価額
相続登記を申請する際には、登録免許税の納付が必要です。登録免許税は税金であるため、課税対象となる財産の評価方法が定められています。相続登記を申請するための土地の評価額(課税価額)は「固定資産税評価額」となります。
そのため、相続登記を申請する場合は、相続した土地の「固定資産税評価額」を調べる必要があります。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額は、「課税明細書」または「固定資産評価証明書」を確認することで調べることができます。
課税明細書
不動産を所有していると、固定資産税という税金が課せられます。毎年4~6月頃に自治体から送付される固定資産税の納税通知書に、固定資産税の算定根拠となる「課税明細書」が同封されてきます。課税明細書には不動産の評価額が記載されているため、これを確認することで固定資産税評価額を把握できます。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、市区町村役場の固定資産課税台帳に登録されている不動産の物件価値(固定資産税評価額)を証明する文書です。前述の「課税明細書」は、この固定資産課税台帳をもとに計算され、発行されています。
固定資産評価証明書には、土地や建物の面積、所在地等の情報とともに固定資産税評価額が記載されています。固定資産評価証明書は、市町村役場で発行できますが、発行の際には手数料として数百円程度かかります。
固定資産評価証明書の取得方法について詳しい解説は「第270回相続コラム 相続登記を申請する際に必要となる固定資産評価証明書とは何か?取得方法も解説」をご覧下さい。
相続税の申告
相続税評価額
相続税は公平に課税される必要があるので、国税庁が財産評価基本通達という通達で、相続した土地の評価方法を定めています。
つまり、相続税を申告するために、相続した土地の評価額を調べる場合には、財産評価基本通達で定められた評価方法に従って、土地の価額を評価する必要があるということです。
なお、財産評価基本通達に基づいて評価した財産の価額を『相続税評価額』と言います。
相続税評価額の算定
土地の相続税評価額を算出する方法は、主に以下の2つの方法に分かれます。
1.路線価方式
2.倍率方式
相続税評価額を求めるためには、土地の所在地や種類(宅地、農地、山林など)によって適切な評価方法を使用します。
路線価方式
路線価方式は、主に宅地や市街地にある土地に使用される評価方法です。国税庁が毎年公開している「路線価図」を使用して路線価を確認し、路線価に土地面積を乗じて相続税評価額を算出します。
例えば、路線価図に記載された道路が、1㎡あたりの価格が10万円とされている場合、その路線価は「10万円」となります。そして、仮に土地の面積が100㎡だとすると、相続税評価額=路線価×土地面積=10万円×100㎡=1,000万円となります。
ただし、土地の形状や間口等により、様々な補正がかかったりする場合がありますので、正確な相続税評価額を知りたい場合には、専門の税理士に相談することをオススメします。
国税庁:路線価図・評価倍率表
https://www.rosenka.nta.go.jp/
倍率方式
路線価が設定されていない地域の土地の評価には倍率方式を使用します。倍率方式は、土地の固定資産税評価額に、相続税の「評価倍率」を乗じて算出する方法です。評価倍率は国税庁の「路線価図・評価倍率表」を確認することで調べることができます。
例えば、相続した土地の固定資産税評価額が1,000万円であり、評価倍率が1.2倍のケースでは、
相続税評価額=固定資産税評価額×倍率=1,000万円×1.2=1,200万円となります。
不動産の売却
実勢価格
相続した土地を売却する場合には、相続税における『相続税評価額』や登録免許税における『固定資産税評価額』のような公の評価方法が定まっているわけではないので、『実勢価格』を参考に売買を行うことがあります。
実勢価格とは、実際に市場で売買される際の価格、つまり時価(マーケット価格)のことを指します。実勢価格は、売り手と買い手の合意によって成立する価格ですので、公的な評価ではなく、現実の取引を反映した価格となります。ですので、時期や景気、近隣環境、取引当事者の事情など、様々な要素によって変動します。
実勢価格と公示価格の違い
実勢価格とよく似たものとして、公示価格があります。公示価格は土地の売買の“目安”として、国土交通省が公表しているものです。公示価格は、公共事業用地の取得価格算定などには利用されていますが、一般の不動産取引が公示価格でなされているわけではありません。
実勢価格は、実際に市場で取引される価格であり、現実に売買契約が成立した際の「取引価格」を指します。公示価格は、取引当事者の事情等が除かれた、土地そのものの価値のみを表した価格であり、あくまで取引の目安として機能します。
実勢価格の調べ方
実勢価格を調べる方法は多岐にわたります。
最も手軽に調べる方法として、インターネットを活用することが挙げられます。例えば、国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ」や不動産ポータルサイトを確認し、過去に同様の物件がどのような価格で取引されたかを把握することで、現在の相場を見極める手助けになります。また、公示価格や基準地価等の公表されている土地評価額をもとに、実勢価格を算出する方法もあります。
ご自身で調べる以外にも、不動産会社に査定を依頼するという方法もあります。地元の市場に詳しい不動産業者に査定を依頼することで、物件の特性や周辺環境を踏まえた実勢価格を知ることができます。
国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
遺産分割
遺産分割の際の評価方法
遺産分割協議は、相続人の協議によって遺産の分け方を決めるものであり、相続人同士で合意を形成できるのならば、どのような評価方法を用いて不動産を評価しても問題はありません。
実勢価格や相続税評価額で用いる路線価で評価したり、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼したりすることもあります。
おわりに
今回のコラムでは、相続した土地の評価額を調べる方法を解説しましたが、いかがだったでしょうか。今回のコラムのポイントは、土地の価額を評価する際には、評価する目的を明確にし、その目的に適した評価方法を用いることが重要という点にあります。
相続に関する様々な手続きを進める前提として、本コラムが相続した土地の評価額を調べる際の一助になれば幸いです。
当事務所は、不動産に関する登記手続きのエキスパートである司法書士事務所として、40年以上にわたって培ってきた関連士業とのネットワークがあります。司法書士として不動産や不動産業者に関する情報を有しており、不動産が関連する相続問題について、特に力を入れています。
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