第301回相続コラム 相談事例から解説する不要な不動産を相続した場合の対処法

相続コラム

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第301回相続コラム 相談事例から解説する不要な不動産を相続した場合の対処法

第301回相続コラム 相談事例から解説する不要な不動産を相続した場合の対処法

相続には、現金や預金のようなプラスの財産が手に入るというメリットがある一方、借金や負債といったマイナスの財産も受け継ぐという側面もあります。また、不動産を相続した場合、その不動産が必ずしも価値があるとは限らず、相続することによって固定資産税の負担が増えたり、管理の手間がかかったりする場合もあります。

今回のコラムでは、実際に当事務所でお受けした相談事例を元に、不要な不動産を相続した場合の対処法を解説したいと思います。

なお、相談事例の内容についてはプライバシーに配慮し、わかりやすく解説するため、内容を一部改変しております。

 

相談事例概要

相談者Xさんは、2ヶ月前に父Aが亡くなり、Aから相続した世田谷区の自宅に住んでいました。ところがある日、自宅にA名義の別荘について、その管理会社から管理費の請求書が届きました。Xさんは、Aが別荘を所有していたことは全く知らなかったため、請求書が届いて初めてその存在を知りました。

A名義の別荘は、東京から遠く離れた地方にあり、Xさんとしては特に利用予定がないため、固定資産税や管理費の負担を免れるために売却を検討しました。しかし、不動産業者からは「価値が低すぎて買い手がつかない」と依頼を断られてしまいました。

Xさんは、相続した不要な別荘の扱いに困り、当事務所へ相談に来られました。

 

相続放棄という手段

故人の遺産は、相続人に相続されるのが原則ではありますが、必ずしも相続人が遺産を相続しなければならないというわけではありません。相続放棄という制度を利用することによって、遺産を相続しないことが可能です。

ただし、注意しなければならないのは、相続放棄をすると、その放棄した相続人は、「初めから相続人とはならなかったもの」とみなされ、一切の遺産を相続することができなくなることです。例えば、「自宅は相続したいけど、別荘は必要ないので別荘だけ放棄する」といったことはできません。相続放棄した場合には、別荘も含め全ての遺産を相続しないことになります。

■相続したくない場合には相続放棄という制度がある。
■相続放棄した場合には一切の遺産を相続しないことになる。
■特定の遺産だけ相続する(しない)という選択はできない。

今回の相談者Xさんのケースでは、現在お住まいの自宅は相続したいと考えていたので、相続放棄は選択肢に入りませんでした。

相続放棄は、目ぼしい遺産が不動産以外には存在せず、その不動産も相続したくないという場合には有効ですが、今回のケースのように、どうしても相続したい遺産がある場合には、利用できません。

なお、相続放棄には期限が定められているため、仮に相続放棄をする場合には、期間内に手続きを行う必要があります。具体的には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」(民法915条)に家庭裁判所にて手続きを行う必要があります。相続放棄ができる期間はとても短いため、相続発生後、速やかに相続財産の調査を行うことが重要です。

 

相続土地国庫帰属制度という手段

相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地を国が引き取ってくれるという、2023年4月27日にスタートした比較的新しい制度です。

土地を相続したけれど、「遠くに住んでいるので利用する予定がない」、「ご近所に迷惑をかけないように維持・管理するのが大変」、「固定資産税の負担が大きい」等の理由から、不要な土地を手放したいというニーズは以前からありました。

土地が管理されないまま放置され、将来、「所有者不明土地」となってしまうことを予防するために、一定の要件の下で、相続した不要な土地を国に手放せるようにしたのが、相続土地国庫帰属制度となります。

ただし、相続土地国庫帰属制度では、手放すことができるのは「土地」に限られるため、今回のケースでは、利用することができません。どうしても相続土地国庫帰属制度を利用したいという場合には、一度別荘を取り壊し、更地にする必要があります。

つまり、「相続土地国庫帰属制度は、不要な『土地』を手放すには有効だが、建物が存在する土地を手放すことはできない」ということなので、注意が必要です。

相続土地国庫帰属制度を利用するためには、下記の10項目のいずれにも該当しないことが必要です。

①建物の存する土地
②担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路など他人による使用が予定されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地
⑤境界が明らかでないなど、所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地
⑥崖がある土地のうち、管理に過分の費用または労力を要する土地
⑦管理・処分を阻害する工作物、車両、樹木などが地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟をしなければ使えない土地
⑩その他、管理・処分に過分の費用または労力を要する土地

相続土地国庫帰属制度について詳しい解説は、「第200回記念相続コラム 相続土地国庫帰属制度」をご覧ください。

 

不動産業者との連携

今回のケースは、相続放棄という手段は採れず、また、相続土地国庫帰属制度の対象外でした。
別荘をそのまま売却することができれば話は早いのですが、遠く離れた地方の建物等は、買い手がつきにくいという現状があります。

そんな中、当事務所では、当事務所と協力関係にある不動産業者と連携し、別荘の買い手を探し出し、別荘を売却するという解決策をとりました。売却金額自体はタダ同然の少額ではありましたが、不要な不動産を手放すことにより、固定資産税や管理費の負担から解放されることになりました。

当事務所は、不動産に関する手続きのエキスパートである司法書士事務所として、40年以上にわたって培ってきた業者とのネットワークがあります。司法書士として不動産情報や不動産業者にも精通しているので、不動産が関連する相続問題については、特に力を発揮します。

今回の事例でも、不動産業者と連携し、買い手を捜すだけではなく、売却の前提として必要な相続登記や売却時の所有権移転登記を含め、ワンストップでサービスを提供しました。

不動産の相続で困った際には、不動産業者に相談する以外にも、当事務所のような相続問題に精通し、かつ、売却に強い不動産業者と連携している司法書士事務所に相談するという手段も有効となります。

 

おわりに

実際に当事務所でお受けした相談事例を元に、不要な不動産を相続した場合の対処法を解説しましたが、いかがだったでしょうか。

不要な不動産を相続したくない場合には、相続放棄が有効ですが、相続放棄は全ての遺産を放棄することになってしまうので注意が必要です。相続した不動産が土地であり、一定の要件を満たす場合には、相続土地国庫帰属制度によって国に手放すという手段があります。その他、不動産を売却・贈与・寄付等によって他人に譲るという手段もありますが、買い手等がなかなか見つからないというケースもあります。そのようなケースでは、不動産業者以外にも、当事務所のような相続と不動産に強い司法書士事務所に相談するという手段も有効となります。

当事務所では、相続・遺言・相続登記などに関する相談を広く受けております。相談は、初回無料ですので、相続した不要な不動産についてお困りの方はもちろん、相続についてわからないことや、お悩みのある方は、お気軽にご相談ください。