第218回相続コラム 改正法施行の影響 寄与分や特別受益の主張に期間制限ができました

相続コラム

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第218回相続コラム 改正法施行の影響 寄与分や特別受益の主張に期間制限ができました

第218回相続コラム 改正法施行の影響 寄与分や特別受益の主張に期間制限ができました

新年度が始まり、新しい生活が始まった方も多くいらっしゃると思いますが、改正法の施行によって、相続に関する制度も新しくなっています。今回のコラムでは、令和5年4月1日施行の改正法によって、寄与分や特別受益がどう変わったのかについて解説したいと思います。

 

そもそも寄与分や特別受益とは何か

寄与分とは

寄与分とは、ある相続人が被相続人に対して、労務の提供や財産上の給付、療養介護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合において、他の相続人との間に不公平が生じないように、被相続人の財産を他の相続人より多く相続することができるように設けられた制度です。

簡単に言うと、故人の遺産の維持・増加に貢献した相続人に対して、遺産の取り分を多くすることによって、遺産分配の実質的公平を図る制度が寄与分となります。

寄与分について詳しくは
第22回相続コラム 相続分が変わる!?寄与分とは?」をご覧ください。

 

特別受益とは

特別受益とは、相続人が被相続人から生前に贈与を受けていたり、相続開始後に遺贈を受けていた等、特別な利益を被相続人から受けていることを言います。

このような場合に、例えば相続分が同じ割合の相続人同士でそのまま遺産分割をすると、一方の相続人は特別受益+相続分を受け取り、他方の相続人は自分の相続分のみを受け取ることになり、不公平な結果になってしまいます。

そこで法は、特別受益を受けた相続人と受けていない相続人とがいる場合に、相続人間の公平を図るために、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその特別受益の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分の中からその特別受益を控除した残額をその人の相続分とするようにしています。

つまり、特別受益の制度は、生前に故人から多額の贈与等を受けていた相続人=特別受益者がいる場合には、その特別受益に相当する価額を遺産に持ち戻すことによって、公平な遺産分割を実現する制度と言えます。

特別受益について詳しくは
第21回相続コラム 遺産分割で問題となる特別受益とは?」をご覧ください。

まとめ
寄与分も特別受益も、遺産分割協議時に、相続人間の不平等を是正し、公平な遺産分割を実現する制度です。

 

寄与分や特別受益に10年の期間制限

遺産分割協議には、「いつまでにしなければならない」という期限はなく、その際に主張される寄与分や特別受益の主張にも特に期間制限はありませんでした。

しかし、令和5年4月1日から施行された改正法では、寄与分や特別受益の主張に、期限が設けられることとなり、相続開始から10年経過すると、原則として、寄与分や特別受益の主張ができなくなります

改正法施行後においても、遺産分割協議自体には、期限は設けられていません。ただ、遺産分割協議時において、相続人間の公平を図る制度である寄与分や特別受益の主張に期間制限が設けられたため、公平な遺産分割を実現するためには、遺産分割協議自体も寄与分や特別受益の主張が可能な期間に行うべきであり、事実上、遺産分割協議にも期限が設けられたような格好となっています。

改正前の法律では、遺産分割協議をしなくても、特に相続人には不利益はなかったため、遺産分割をせずに、そのまま遺産を放置する相続人も多く、その後、代替わりが進み、いざ遺産分割をしようにも、相続人を見つけるのが困難になったり、結果、所有者不明土地の増加につながったりと、様々な問題の温床ともなっていました。また、長期間経過した後に、いざ寄与分や特別受益を主張するにも、証拠が散逸していたり、証人が亡くなっていることがあり得ます。

今回の改正法では、寄与分・特別受益の主張に期間制限を設けることで、事実上、遺産分割協議にも期限が設定されることとなり、遺産分割の早期実現を図り、上記のような問題を解消しようとしているのです。

民法第904条の3
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 

改正法施行前の相続にも適用

改正法施行は令和5年4月1日ですが、改正法施行前に発生した相続についても、改正法が適用されることになります。

改正法施行前に発生した相続については、経過措置が設けられており、相続発生から10年経過時または施行時から5年経過時(令和10年4月1日)のいずれか遅い時期が到来することによって、寄与分・特別受益の主張が制限されることになります。

令和3年民法改正付則第3条
新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と、新民法第九百八条第二項ただし書、第三項ただし書、第四項ただし書及び第五項ただし書中「相続開始の時から十年」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時」とする。

おわりに

今回のコラムでは、令和5年4月1日施行の改正法によって、寄与分や特別受益がどう変わったのかについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。新年度になると、制度が変わっていたり、新設されたりすることが少なくないので、情報のアップデートは重要となります。

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