第20回相続コラム 令和で変わる遺産分割
今日から新元号、令和がスタートします。
2018年に相続法が大きく改正され、多くの改正された相続法が令和に実際に施行されます。
今回は、令和で変わる遺産分割に関する新制度をまとめてみました。
配偶者保護のための制度
これまで、被相続人が生前に配偶者に対して居住用の家・土地を贈与していた場合、原則として「遺産分割の計算の対象に含める」ことになっていました。遺産分割の計算の対象になるということは、例えば相続分が1000万円で自宅および土地が1000万円の評価額だとすると、自宅・土地以外の財産を取得することはできません。そうすると、せっかく自宅の贈与を受けたのに、それ以外の財産を相続することができず、配偶者にとっては不利な扱いと言えました。いわば遺産の「先渡し」とされていたのです。
改正後は、結婚して20年以上経つ夫婦間において、配偶者に自宅が贈与(または遺贈)された場合、その自宅は特別受益の対象外、つまり「遺産分割の計算の対象に含めない」ことになります。
これによって、自宅を贈与された配偶者は、より多くの遺産分割を受けることが可能になります。
遺産分割前の払戻し制度
これまでは、遺産分割が完了するか、または家庭裁判所の許可がないと、亡くなった方の預貯金の払い戻しはできませんでした。そうすると一般的に高額になる葬儀費用の支払が困難になったり、当面の生活費を工面するのが難しくなる場合がありました。
そこで、改正後は、亡くなった方の預貯金について、一定額までは家庭裁判所の許可を得ずに払い戻しを受けられるようになります。
払い戻せる額は、「預金額の3分の1に法定相続分をかけた額」となります。
ただし、金融機関ごとの上限金額150万円を超えることはできません。
遺産使い込みの対策
相続人のうち誰かが遺産を使い込んでしまった場合、他の相続人の同意だけで(使い込んだ人の同意は不要)使い込んだ分の遺産を遺産分割の対象に含めることができるようになります。使い込んだ財産を遺産分割の対象に含めることによって、使い込んだ人をいわば遺産の先渡しを受けたものとして扱うことができます。
改正前までは、遺産を使い込まれてしまった分は遺産分割の対象外で、最終的に取り戻すには訴訟しかなく、取り戻すには手間と時間がかかりました。これでは使い込んだ者が得してしまい不公平だったので、使い込んだ分も遺産に含めて分割し、公平になるように改正されました。
施行日
上記のいずれの改正も今年の7月1日から施行されます。
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