第123回相続コラム DINKs(子どものいない夫婦)こそ注意したい。相続トラブルから配偶者を守るためにできること

相続コラム

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第123回相続コラム DINKs(子どものいない夫婦)こそ注意したい。相続トラブルから配偶者を守るためにできること

第123回相続コラム DINKs(子どものいない夫婦)こそ注意したい。相続トラブルから配偶者を守るためにできること

DINKsという言葉をご存じでしょうか?DINKs(ディンクス)とは、”Double Income(共働き)No Kids(子どもを持たない)夫婦」の頭文字を並べたものであり、共働きで意識的に子どもを持たない夫婦やその生活観のことをいいます。

女性が社会的に活躍する機会が増えている現在では、DINKsの世帯数も増加傾向にあります。DINKs世帯の場合、夫婦の一方に相続が発生した際には、もう片方が相続人となることは明白で、相続関係はシンプルにも思えますが、意外にもDINKs世帯は相続トラブルに遭遇しやすいと言われています。

今回のコラムでは、DINKs世帯によくある相続トラブルとその対策について解説したいと思います。

 

DINKs世帯は相続トラブルに遭いやすい

なぜDinks世帯は相続トラブルに遭いやすいのでしょうか?
それは相続の仕組みと関係しています。

相続の仕組みからくるトラブル

法律では、法定相続人の順位は次のように定められています。

【法定相続人の順位】
常に相続人:配偶者
第1順位:子
第2順位:父母
第3順位:兄弟姉妹

DINKs世帯の場合で当てはめて考えると、例えば夫が亡くなった場合には、妻は常に相続人になります。そして、第一順位の相続人である子がいませんので、第二順位である夫のご両親、または、ご両親が他界している場合には、第三順位の夫の兄弟姉妹が相続人となります。

DINKsの中には、「子どもがいないので、配偶者が亡くなった場合には、その財産は自分が全部相続できるはず」と思っている方も多くいらっしゃいますが、実は、配偶者の親・兄弟姉妹も相続人となるため、それらの方と財産を分ける形になってしまいます

普段から、義理の両親や義理の兄弟姉妹と良好な関係を保っている場合には、そこまでトラブルに発展するケースは少ないのですが、関係が疎遠であったりすると、義理の両親や兄弟姉妹との間に本来立つべき配偶者が不在のこともあり、トラブルにつながるケースも多く見られます。

また、亡くなった配偶者の財産を生活資金のあてにしている方も多くいるので、あてにしていた生活資金が大きく減ってしまうことから、揉めるケースも多々あります。

争いにはならないとしても、相続が発生すると、相続財産をどのように分けるのかを決める遺産分割協議というものが必要になるのですが、この協議は「相続人全員で合意」して決定する必要があります。相続財産の分け方で、誰か一人でも意見の食い違う人がいれば、協議が進まず、財産の処分等ができなくなります
また、相続人同士が遠方に住んでいたり、ご高齢の場合は、協議すること自体が大きな負担だったりもします。

相続財産の割合の大半を不動産が占める場合は特に注意

不動産は高価な財産であり、相続財産の割合の大半を占めることも少なくありません。
相続財産を義理の両親や兄弟姉妹と分配する際に、ご自身が住み慣れた家に住み続けるためには、他の相続人の取り分に相当する現金等を支払う必要があります。他の相続人に支払うだけの現金等が用意できない場合には、最悪、住んでいる家を売却して、その代金に充当しなければならないこともあります。また、仮に他の相続人に現金等を支払えたとしても、その後の生活を考えると非常に厳しい状況に陥る危険性もあります。

相続財産の割合の大半を不動産が占める場合には、上記のことから特に争いになりやすいと言えます。

 

DINKsの配偶者が安心して相続できるための対策

上記のようなトラブルは、そもそも義理の両親や兄弟姉妹と相続財産を分けることから発生しています。ですので、それを回避するために「残された配偶者に必要な財産を必要なだけ残す遺言書」を作成しておけば、無用なトラブルを未然に防ぐことができます。

予め遺言書を作成しておくと、面倒な遺産分割協議を省くことができるので円滑に手続きが進められます。特に、配偶者が義理の両親や兄弟姉妹と疎遠であったり、また良好な関係であったとしても、遠方に住んでいる、高齢なため移動は困難等の事情がある場合には負担軽減にもなります。

また、遺言書により、残された配偶者が安心して生活するために必要な分の財産を自由に残すことができます。特に、法定相続人が自己の配偶者と兄弟姉妹の場合には、兄弟姉妹には遺留分がないので、全財産を配偶者に残すことも可能です。(遺留分について詳しくは「第30回相続コラム しっかり押さえたい遺留分の基本」。)

遺言は、ただ「誰に何を残す」のかを決めるためのものではなく、残されたご家族が、無用な争いに巻き込まれないため、面倒な手続きをしなくても済むようにするため、安心して暮らせるようにするために非常に有効なツールとなります。特にDINKsに遺言は必須と言っても過言ではありません

当事務所でも、相続・遺言について相談を受けており、遺言に精通した専門の司法書士が在籍しておりますので、お気軽にご相談下さい。